インドネシア通信デジタル省(MCDA)は6月10日、同国西ジャワ州デポックの国営通信技術研究所(IDTH)を拠点に、輸入される情報通信機器の大半を今後1年以内に国内で試験する体制を整備し、2026年末までにすべての通信機器試験を国内で実施する計画を発表した。
EMCエクセレンスフォーラム2025セミナー中にIDTHのラボを訪問するムティア・ハフィッド(Meutya Hafid)通信デジタル相(右)とワヤン・トニ・スプリヤント(Wayan Toni Supriyanto)デジタルインフラ局長(右から2人目)
ANTARA FOTO/Yulius Satria Wijaya (出典:Indonesia.go.id)
これまでインドネシアでは、情報通信技術(ICT)製品の試験施設が限られ、多くが海外での認証に依存していた。その結果、2023年には30兆ルピアを超えるICT分野の貿易赤字が発生し、スマートフォンやパソコンなどの輸入超過がその主要因とされている。
この状況を打開すべく、2024年にジョコ・ウィドド(Joko Widodo)大統領(当時)が正式に開所したIDTHは、東南アジア最大規模の試験施設として、電磁両立性(EMC)、比吸収率(SAR)、電磁場(EMF)など12の高度な試験ラボを備え、2万2723m2の敷地に展開している。2023年には600件超の試験を実施し、2026年には年間5000件まで対応可能な体制へ拡充する見通しだ。
さらに、MCDAと国家標準化庁(BSN)は、IDTHを国際認証水準に引き上げ、国家通信機器試験センター(BUDN)として正式に指定する方針を打ち出している。
IDTHは単なる試験施設にとどまらず、大学やスタートアップ、中小企業との連携を通じた技術革新のハブとしての役割も期待されている。MCDAのデジタルインフラストラクチャー担当局長ワヤン・トニ・スプリヤント(Wayan Toni Supriyanto)氏は「IDTHは、国家のデジタルエコシステムにおける保護者、ゲートウェイ、スペクトルの管理者としての三つの重要な役割を担っている」と述べた。
IDTHは、施設、人材、そして規制の継続的な改善により、インドネシアのデジタル主権の先駆者となる体制を整えている。これは、デジタル変革を通じて国家の発展を促進するというプラボウォ・スビアント(Prabowo Subianto)大統領のビジョンと合致しており、2045年を目標とする「黄金のインドネシア」構想の実現に向けたインドネシアのグランドストラテジーの1つに位置づけられている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部