2025年07月
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窒化ガリウム半導体に特化した国立イノベーションセンターを開設 シンガポール

シンガポールの南洋理工大学(NTU)は6月26日、窒化ガリウム(GaN)半導体に特化したシンガポール初の国立イノベーションセンターである、GaN向け国家半導体トランスレーション・アンド・イノベーションセンター(NSTIC(GaN))を正式に開設したと発表した。

タン・シーレン(Tan See Leng)貿易産業省エネルギー科学技術担当相(中央)とNSTIC(GaN)エグゼクティブディレクターのン・ジオック・イン(Ng Geok Ing)NTU教授(左端)ら
(出典:NTU)

NSTIC(GaN)は、2023年に設立された国立窒化ガリウム技術センター(NGTC)を母体として発展したもので、シンガポール科学技術研究庁(A*STAR)、DSO国立研究所、NTUの三者による共同事業で、NTU電気電子工学部のン・ジオック・イン(Ng Geok Ing)教授がエグゼクティブディレクターを務める。

GaNは、従来のシリコンに比べて高電圧・高周波で動作可能で、エネルギー損失が少なく、より小型で高速かつエネルギー効率の高い電子部品を実現できるとされる。現在、GaNデバイスは、USB急速充電アダプタ、LED照明ドライバ、ノートパソコン用電源などに採用されており、その熱特性と電気特性により、コンパクトで効率的な設計が可能となっている。また、高い電力効率から、電気自動車(EV)の急速充電器など、車載システムでも注目を集めている。

NSTIC(GaN)は、最先端のウェーハ製造や試作設備へのアクセスを産業界に提供し、現地の製造能力やエコシステムの強化を通じてイノベーションの加速を図る。同センターは、シンガポールに高度なGaN製造能力をもたらし、国内のイノベーターが、先進的な5Gおよび6G通信システム、レーダー、衛星通信といった急成長を遂げるグローバル市場で競争できる基盤を築くことが期待される。NSTIC(GaN)は、研究、試作、産業との連携を統合することでシンガポールを先進半導体技術の国際的ハブとすることを目指している。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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