インドネシアは、長年輸入に依存してきた塩の供給体制を見直し、2027年までに塩の完全自給自足を達成する国家目標を掲げ、今後推進する取り組みについて紹介した。インドネシアのポータルサイトPortal Informasi Indonesiaが6月29日に伝えた。

インドネシアは国家塩産業の発展において巨大な潜在力を有するが、国内需要、特に産業用需要を満たすためには依然として輸入に依存している
ANTARA FOTO (出典:Indonesia.go.id)
世界第2位の海岸線と豊富な日照量を有するインドネシアは、理論上は塩の生産に非常に有利な条件を備えているにもかかわらず、長年にわたり年間数十万t規模の塩を輸入してきた。塩の自給を果たすべく、増産に取り組み2024年の国内塩生産は約204万tに達し、目標としていた200万tを上回った。2025年には225万t、備蓄83万6千tの確保を目指している。これにより、国内需要の約63%を賄う計画である。
インドネシアの塩の総需要は490~500万tと推定され、そのうち300万t以上が食品、医薬品、化学分野などの工業用途で使用されている。このような工業用途の塩に関して、品質・量ともに国内生産ではまだ対応しきれておらず輸入に頼っている。政府は工業用途においても2027年までの自給自足を目標としている。2025年3月には、プラボウォ・スビアント(Prabowo Subianto)大統領が「国内塩産業の発展促進に関する大統領令第17号」を公布し、国家目標として2027年の塩の自給達成を明文化した。政府は2025年12月まで食品加工、医薬分野、2027年12月まで化学産業分野の国産化を義務付ける規定を導入した。
インドネシアの海洋・水産省(KKP)は技術支援、生産能力拡大、持続可能な資源管理を柱とした自給自足を達成するための戦略を策定した。また、塩田農家、地方自治体、産業界などを巻き込んだ自給自足プログラムも作り、その一環として塩田開発の可能性のある地域として、西ヌサ・トゥンガラ州(NTB)を国家の塩生産拠点の主要候補地として位置づけている。
KKPでは東ヌサ・トゥンガラ州の開発にも着手している。2026年には、国立塩産業センター(K-SIGN)の建設が始まり、近代的な塩田や加工施設を整備し、約2万6千人の雇用創出が見込まれている。
塩の自給自足は、インドネシアの「ゴールデン・インドネシア2045」ビジョンにおいて経済の基盤の1つに据えられている。政府はこの動きを単なる農業政策ではなく、国家の独立を象徴する取り組みと位置づけている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部