シンガポールの南洋理工大学(NTU)は7月21日、がんや早期老化の原因となるDNA-タンパク質クロスリンク(DPC)損傷を、修復酵素であるSPRTNがどのように特異的に修復するかを解明したと発表した。英国のオックスフォード大学との共同研究。研究成果は学術誌Nucleic Acids Researchに掲載された。

研究を率いたクリスティアン・ラマダン(Kristijan Ramadan)教授
(出典:NTU)
DPC損傷は、DNAに不要なタンパク質が結合することで、DNAのコピーを阻害する深刻なDNA損傷である。これは通常の細胞代謝のほか、化学療法や紫外線、ホルムアルデヒドなどの環境要因により発生し、修復が遅れると神経変性、早期老化、がんの要因となる。本研究では、SPRTNがDPCをどのように認識・分解するかを分子レベルで解析した。
NTUリーコンチアン医学部(LKCMedicine)のクリスティアン・ラマダン(Kristijan Ramadan)教授が率いる研究チームは、SPRTNがDPC損傷を選択的に認識・修復できる領域を発見した。この領域はDPC病変に豊富に存在するユビキチン鎖を検出する。DPCにユビキチン鎖が無い場合SPRTNによる修復は遅く非効率的だが、ユビキチン鎖が存在する場合、修復能力が67倍向上する。また、1~2個のユビキチン鎖よりも長い鎖の存在が修復を著しく加速することも確認した。これにより、SPRTNは他の細胞内タンパク質を損なうことなく、DPCのみを標的に迅速に分解できる。
研究者らは今後、ゼブラフィッシュ、マウス、ヒト組織を用いたさらなる検証により、DPC修復機構を強化する方法を探る予定だ。この研究により、老化とがんのプロセスに関する理解を深めるとともに、治療介入の新たな方向性を明らかにできる可能性がある。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部