2025年09月
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エネルギー効率の高い超小型レーザーを開発 シンガポール南洋理工大学

シンガポールの南洋理工大学(NTU)は8月14日、国際研究チームとともにエネルギー効率が高く消費電力が少ない新しいタイプの超小型レーザーを開発したと発表した。研究成果は学術誌Nature Photonicsに掲載された。

NTUのワン・チージエ(Wang Qijie)教授(左)とツイ・ジェユアン(Cui Jieyuan)博士

開発されたレーザーは砂粒より小さいマイクロメートルサイズで、光漏れを最小限に抑える特殊設計を採用している。これにより、従来の小型レーザーに比べて動作に必要なエネルギーを大幅に削減できる。レーザーは6G通信に用いられるテラヘルツ領域の光を放射し、将来の高速無線通信に道を開く可能性がある。

超小型レーザーは光コンピューティングやデータセンター、高速通信、医療用画像処理、高度なセンサーなど幅広い用途が期待されるが、光が漏れて性能が低下する課題があった。今回のレーザーは、フォトニック結晶に「フラットバンド」と「多重束縛状態(BIC)」の原理を組み合わせた空洞設計を採用し、漏れや散乱、放射による損失を抑制した。

具体的には、半導体材料を2層の金で挟んだフォトニック結晶に、デイジー型の穴を周期的に配置することで、光がキャビティ(共振器)外へ逃げるのを防いだ。これにより、3次元的な光漏れをほぼ抑制できる「究極の解決策」となる可能性がある。得られるレーザー光は高い指向性を持ち、精密な光学アプリケーションへの応用が見込まれる。

左:六角形のレーザー共振器を有するチップ、中央:レーザー共振器内のデイジー型空気孔の周期的な配置により光漏れ・散乱・放射による損失を低減、右:孔の拡大図
(出典:いずれもNTU)

主任研究者のワン・チージエ(Wang Qijie)教授は「フォトニックバンド構造工学における15年以上の経験を活かし、フラットバンドとBICを組み合わせることで光を効果的に閉じ込め、損失を減らすことができることを認識しました」と説明した。第1著者のツイ・ジェユアン(Cui Jieyuan)博士は「私たちのレーザーは既存の小型レーザーの欠点を克服し、次世代のウェアラブル技術から光コンピューティングまで応用範囲が広がります」と述べた。さらに米国のペンシルバニア大学のジェン・ボー(Zhen Bo)准教授は「このイノベーションはトポロジカルフォトニクスにおける画期的進展です」と評価した。

研究チームは今後、出力向上と光電子デバイスへの統合を進めていく。また、この技術を市場に投入するための産業界の協力者を探している。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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