インドネシア国家研究イノベーション庁(BRIN)は9月16日、ジョグジャカルタで開催したセミナーにおいて、バイオインフォマティクスを活用した精密腫瘍学研究の進展を紹介した。
発表を行ったのはBRINコンピューティング研究センターのリフキ・サディキン(Rifki Sadikin)センター長で、計算システム生物学や薬物再利用の観点から、個別化がん治療におけるバイオインフォマティクスの役割を説明した。ゲノムやトランスクリプトーム、プロテオーム、臨床データを統合することで、がんの分子メカニズムの理解が進み、患者ごとの分子特性に基づいた治療法が可能になるという。
具体的には、次世代シーケンシング(NGS)や高性能コンピューティング(HPC)を用いて特定の遺伝子変異やバイオマーカーを解析し、標的阻害剤やゲノム情報に基づく免疫療法の適用を検討できる。同センター長は「このアプローチは治療効果を高め、副作用を抑え、患者の生活の質を改善します」と述べた。
さらに、マルチオミクスデータの統合解析では遺伝子発現やタンパク質相互作用、エピジェネティクス情報に加え、機械学習を用いた治療反応予測も可能である。これにより、より精度の高い治療予測モデルの開発が進められる。同センター長は「トレーニングや分野横断的な協力、計算基盤の整備への投資が、持続可能ながん治療の実現に不可欠です」と強調した。
今回のセミナー「精密腫瘍学におけるマルチオミクス:データから臨床的影響への橋渡し」は、プレシジョン・オンコロジーを基盤とするオミクス研究連携センター(PKR Promics)の活動の一環であり、知識交流を促進する場として開催された。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部