2025年10月
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豪大学と共同開発、衛星画像とAIで小規模農家を支援 ベトナム

オーストラリアとベトナムによるベトナム技術革新支援プログラムであるAus4イノベーション(Aus4Innovation)は9月17日、オーストラリアの南クイーンズランド大学(UniSQ)とベトナム国家宇宙センター(VNSC)と共同で、衛星画像やドローンデータ、人工知能(AI)を用いたデジタル作物マップを開発し、ベトナムの小規模農家による作物監視と収量向上に貢献していると発表した。

オーストラリアとベトナムの共同プロジェクトは、衛星画像、ドローンデータ、AIを活用したデジタル作物状況マップを開発し、ベトナムの小規模農家が作物を監視し収量を向上させる手助けをしている
(出典:Aus4Innovation)

本プロジェクトは「ベトナムの小規模農家と政府意思決定者による作物監視と情報アクセスの改善」をテーマに、Aus4Innovationプログラムによって支援されている。共同出資と管理はオーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)が担い、ベトナム科学技術省と戦略的連携によって実施される2年間の取り組みである。

新たに開発されたデジタルマップは、米や果物の作物健全性や収量の見込みを示すもので、AIによって強化された衛星・ドローン画像を活用している。これにより、ベトナムのタイニン省、アンザン省、ドンタップ省の農家は、畑の状況を精度高く把握できるようになった。UniSQの上級研究員でプロジェクトリーダーのブライアン・コリンズ(Brian Collins)博士は「ベトナムの重要な農業地域であるメコンデルタの小規模農家にとって、これは収穫量と収入を向上させるための意思決定をより適切に行えるようになることを意味します」と語る。

プロジェクトの目的は先端科学を実用化し、農家が日常的に利用できる形で提供することである。農家は近く、携帯端末からマップやツールに直接アクセスし、収穫計画や資源管理、財務判断に役立てられるようになる見込みだ。コリンズ博士は「明確な情報は農家に自信を与え、害虫や干ばつ、洪水といった課題への対応を早め、リスクを減らすことにつながります」と説明する。

さらに、VNSCのラム・ダオ・グエン(Lam Dao Nguyen)博士は「この取り組みは単なる技術ではなく、地域社会の力を高め、気候変動への耐性を強化し、政府機関の意思決定を支えるものです」と強調した。今後はウェブプラットフォームやモバイルアプリを通じてツールを普及させ、農家や普及員が直接利用できるよう整備する予定である。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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