シンガポールの南洋理工大学(NTU)は9月23日、デンマークのオールボー大学およびオーフス大学とともに、デンマークのグルンドフォス財団から940万米ドルの資金提供を受けて、大都市の冷房エネルギーを最大30%削減する「巨大都市における持続可能な水冷システム(Sustainable Water-based cooling in Megacities:SWiM)」の5年計画を開始すると発表した。

(出典:NTU)
計画は水を媒体とする地域冷却を高度化し、都市全体規模での省エネと脱炭素を実現することを狙う。デンマークの地域暖房の知見と、シンガポールで発展した地域冷房(マリーナベイ地区やテンガー地区の事例)を統合し、都市の広域展開に向けた技術課題の解決に取り組む。
具体的には、冷却需要の将来予測および管理に用いる都市計画ツール、効率監視・故障検知・予測メンテナンスを担うAI(人工知能)、電力系統の安定性と省エネを両立するスマートアルゴリズムの開発などに取り組む予定だ。新規地区と既存建物の改修の双方を対象に、シンガポールで部屋・フロア・建物レベルの実証試験エリアとデジタルツインを整備し、実運用条件下での有効性を検証する。
グルンドフォス財団のキム・ノール・スキブステッド(Kim Nøhr Skibsted)氏は「冷房は最大の電力消費となりつつあり、環境負荷を最小化する革新的システムの必要性が高まっています」と語った。NTUエネルギー研究所のマドハヴィ・スリニヴァサン(Madhavi Srinivasan)教授は「この共同研究は、NTUとデンマークの大学およびグルンドフォスの専門知識を結集し、先進的な持続可能な都市冷房ソリューションを開発するものです。これは、持続可能な都市イノベーションに向けた国際協力における重要な節目となります」と述べた。
グルンドフォスを含む業界パートナーとの緊密な連携により、開発されるイノベーションが実用的かつ拡張可能で、すぐに導入可能となり、都市の冷却エネルギー使用量と炭素排出量の削減が期待される。これらの取り組みは両国の国家気候目標と合致しており、シンガポールは2050年ネットゼロ、デンマークは2045年気候中立の達成を目指している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部