2025年10月
トップ  > ASEAN科学技術ニュース> 2025年10月

安全な飲料水検査のための移動型実験室を立ち上げ フィリピン

フィリピン科学技術省(DOST)は9月23日、ビコル地域局(DOST-Bicol)が飲料水の安全性を現場で確認できるDOST初の移動型実験室「LabMove」の立ち上げを発表した。

LabMoveは、科学技術・イノベーションを社会経済の利益につなげるDOST-Bicolの取り組みの一環として開発され、地方の公衆衛生向上を目指した運用を2026年前半から開始予定だ。特に、地理的に孤立した不利なエリア(GIDA)など、実験施設へのアクセスが限られた地域を対象に、化学的および微生物学的な水質検査を現地で提供することを目的としている。

これまでDOST-Bicol地域標準試験研究所(RSTL)が水の品質管理を担ってきたが、多くの利用者はレガスピ市の本部まで長距離を往復する必要があった。LabMoveの導入により、検体採取から分析、結果報告までを地域で完結でき、移動時間とコストの削減、迅速な公衆衛生対応が可能となる。

LabMoveは、フィリピン飲料水国家基準(PNSDW 2017)に準拠し、pH・濁度・色度・総溶解固形物(TDS)・硝酸塩・残留塩素・一般細菌数(HPC)・大腸菌群・耐熱性大腸菌(E. coli)などの主要項目を現場で分析できる。これにより、地方自治体、水道局、学校、病院、民間施設などがより迅速に水質評価を行えるようになる。

DOST-Bicol地域ディレクターのロメル・セラーノ(Rommel Serrano)氏は「DOST-BicolではSiyensyang Maasahan sa Kabikolan(信頼される科学)を掲げています。LabMoveの導入により、安全な水をより多くの地域に届けることができます。安全な水は基本的な権利であり、すべての人が手の届く範囲にあるべきです」と語った。

LabMoveは現在、試薬・機器の整備や必要な認証取得が進められており、2026年上半期に運用を開始する見込みだ。本取り組みは、DOSTが掲げる「OneDOST4U」ビジョンに基づき、幸福、富の創造と保護、持続可能性の4本柱を具現化する活動の1つである。

(出典:DOST)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

上へ戻る