インドネシア国家研究イノベーション庁(BRIN)は9月27日、BRINのエレクトロニクスリサーチセンター(PRE)が主催する月例イベント「SISTEM」で、組み込みシステム技術を活用した遠隔医療支援の取り組みを紹介したと発表した。
SISTEMは、PREが2022年から継続的に実施している科学技術共有イベントであり、研究者間の知識交流とネットワーク形成を目的としている。2025年9月に開催された第6回は「重要制御システムのセキュリティと信頼性確保における組み込みシステムの役割」をテーマに、オンライン形式で行われた。
PRE所長のユスフ・ヌール・ウィジャヤント(Yusuf Nur Wijayanto)教授は、組み込みシステムが現在の電子応用分野において不可欠な要素となっていると説明した。ハードウェアにソフトウェアを組み込むことで、制御システムの信頼性とセキュリティを高めることが可能になる。具体的な応用例として、遠隔手術における制御技術を挙げ、「PREでは組み込みシステムを用いた遠隔手術用制御システムの開発を進めています。研究インフラはすでに整備されており、今後さらに最適化を図ります」と述べた。
この技術は、医師が患者と同じ場所にいなくても安全に手術を行えることを可能にし、遠隔地でも高度な医療を受けられる環境を整えるものと期待される。同教授はまた「組み込みシステムがエネルギー、食料、農業、防衛など、国民が必要とする幅広い分野や政府プログラムへの応用にも活用されることを期待しています」と述べた。
イベントでは、PREのジュニアエキスパートエンジニアであるリヤント(Riyanto)氏が「外科用ロボットシステム」について講演した。リヤント氏は、外科用ロボット技術が高精度かつ安定した制御を実現し、遠隔操作による手術支援を可能にすることから、医療アクセスの地域格差是正に大きく貢献できると説明した。「外科用ロボットと遠隔制御技術を組み合わせることで、離島や山間部でも専門医の手術を受けられるようになります。公平な医療提供の実現に向けた現実的な解決策です」と述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部