2025年11月
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ファージと細菌の相互作用に新たなDNA修飾システム発見 シンガポール・MITアライアンス

シンガポールと米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究技術アライアンス(SMART)は10月28日、薬剤耐性(AMR)学術研究グループが、ファージがDNAをアラビノース糖で修飾し細菌の防御システムを回避する新たな仕組みを発見したと発表した。研究成果は学術誌Cell Host & Microbeに掲載された。

ファージは細菌に感染するウイルスで、抗生物質が効かない耐性菌を攻撃できることから、抗菌薬耐性問題の有力な対策として注目されている。SMARTの研究チームは、シンガポールの南洋理工大学(NTU)、ニュージーランドのオタゴ大学とカンタベリー大学、オランダのデルフト工科大学、MITであり、研究者らが共同で、ファージDNAの防御機構を解析した。

研究では、DNA中のシトシンに最大3個のアラビノース糖を付加する新しい修飾を確認した。糖の数が増えるほど、ファージDNAは細菌の防御から強く保護されることが分かった。この改変を持つファージの多くは主要な病原菌を標的としており、世界保健機関(WHO)が最優先対策病原体に指定するアシネトバクター・バウマニへの応用が期待される。

SMART AMR主任研究員のリャン・ツイ(Liang Cui)博士は「ファージと細菌の相互作用は、想定よりもはるかに複雑です。高感度分析技術を活用し、複数の新しいDNA修飾システムを発見することができました」と述べた。

オタゴ大学分子微生物学者のピーター・フィネラン(Peter Fineran)教授は「ファージが自らのDNAを改変する過程を理解することで、耐性菌に対抗する治療法の開発につながります。今回の成果を基に、DNA修飾を持つファージを治療に応用する研究が進むでしょう」と語った。

本研究は、シンガポール国立研究財団(NRF)のCREATEプログラムおよびAgilent(アジレント)社のACT-URプログラムの支援を受けて実施された。今後、研究チームは新たに見いだされたファージDNA修飾の多様性を解析し、抗菌薬耐性への理解をさらに深めるとしている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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