ベトナム科学技術省(MoST)は11月3日、科学、技術、イノベーション、デジタル変革を経済成長、労働生産性向上、国家課題の解決と直接結び付ける新たな成長モデルの中心に据えるべきだとする、第14回党大会向け政治報告書草案の方向性を示した。
草案では、社会経済発展・環境保護、党建設、人材育成、国防・安全保障・外交を戦略的任務として連携させるとともに、科学技術、イノベーション、デジタル変革を新たな柱と位置付け、知識・技術・イノベーションを基盤とした成長モデルへの転換を掲げる。ベトナムのGDPが10%伸びる場合、その5%超をこれらの分野が生み出すべきとし、国家予算の3~5%を投入する長期投資を提案する。
重点分野として、エネルギー、機械工学、冶金、新素材、デジタル技術、バイオテクノロジーなどの基盤産業の技術開発を挙げ、半導体、ロボット工学・自動化、人工知能、先端材料、再生可能エネルギー、航空宇宙、量子技術などの新興産業を画期的な成果を生み出す可能性のある分野として育成する方針を示す。また、防衛産業をイノベーション・エコシステムに組み込み、民生と国防に共通するデュアルユース技術の開発を重視し、2030~2035年に戦略技術力を先進国水準へ引き上げることを目指す。
教育・研究体制では、国立大学など主要高等教育機関を科学技術・イノベーションの中核拠点とし、基礎研究を大学へ集約し、研究機関・企業は応用研究や商業化に重点を置く分業体制を提案する。併せて、科学技術機関の管理・投資・自律性の改革、成果に基づく資源配分、国家重点研究室など研究インフラ整備、知的財産やデジタル資源の活用を伴う科学技術市場の育成を重視する。企業を国家イノベーション・エコシステムの中核とし、研究成果は経済成長や生産性向上への具体的貢献で評価すべきだとした。
デジタル変革については、デジタル政府、行政、経済、社会を一体的に推進し、透明性と競争力を高める国家統治モデルの基盤と位置付けている。また、党組織内部のデジタル変革を進め、科学技術に精通した幹部を適切に配置することが、政策実行の実効性向上に不可欠だとしている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部