2025年12月
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新しい分子層でペロブスカイト・シリコン太陽電池の耐久性向上 シンガポール

シンガポール国立大学(NUS)は11月21日、次世代太陽電池として期待されているペロブスカイト・シリコンタンデム太陽電池を効率的に動作させ、耐久性を高める新しい分子層を開発したと発表した。研究成果は学術誌Scienceに掲載された。

パク・ソミン(Park Somin)助教授(中)と研究チームメンバーら
(提供:NUS)

現在一般的に使用されているシリコン単独の太陽電池は性能の上限に近づいている。一方で、シリコンとペロブスカイト材料を組み合わせたタンデム太陽電池による太陽光発電の効率向上が期待されている。しかしこのタンデム太陽電池は、長期的な耐久性に課題があった。これまでの研究では性能低下の原因は主にペロブスカイト材料自体にあると考えられていた。

NUSの研究チームは、文献にある高効率セルを再現し、光と熱を与えて劣化要因を検証した。その結果、ペロブスカイト層は安定していたものの、ペロブスカイトとシリコンを結びつけ、電荷輸送を担う極薄の自己組織化単分子膜(SAM)が加熱されることにより、徐々に秩序だった構造を失い、規則性を保てず層間に隙間が生じ、電流の流れを阻害していることを突き止めた。

この問題を解決するために、研究者らは新しいSAMを設計した。設計したSAMは分子が集合する際に互いに微細な化学結合を形成し、強固に結合した層を形成する。新しいSAMを導入した新材料は耐熱性が高く、65℃で1200時間の連続照射後も初期性能の96%以上を維持した。効率も34%超を達成し、独立機関による33.6%の認証も得た。

NUSのパク・ソミン(Park Somin)助教授は、性能低下の根本原因がSAMにあることを特定し、それを強化することがペロブスカイト・シリコン太陽電池の安定性を高めるブレークスルーだったと説明した。研究チームはこれらのプロトタイプを実際の熱帯条件下で試験し、実用に適したモジュールサイズにスケールアップすることを次の目標としている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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