2026年01月
トップ  > ASEAN科学技術ニュース> 2026年01月

AI解析でマラリア原虫のタンパク質相互作用を明らかに シンガポール南洋理工大学

シンガポールの南洋理工大学(NTU)は、研究者らがマラリア原虫におけるタンパク質複合体の相互作用を網羅的に解析する新手法を用い、これまで不明だった多数の相互作用を明らかにしたと発表した。研究成果は学術誌Nature Microbiologyに掲載された。

(出典:NTU)

マラリアは現在も世界的な健康課題であり、毎年50万人以上が命を落としている。抗マラリア薬に耐性を持つ原虫の増加も、疾病制御を脅かしている。最も致死率の高いマラリアは、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)によって引き起こされる。同原虫は5200種類を超えるタンパク質を産生し、そのライフサイクル各段階におけるタンパク質間の相互作用が病原性に関与しているが、約半数のタンパク質については機能や分子相互作用が分かっていなかった。

研究チームは、こうした相互作用を調べるため、人工知能(AI)を統合した「メルトーム支援型タンパク質複合体プロファイリング(MAP-X)」を開発した。まず熱プロテオームプロファイリング(TPP)を用いて、加熱時のタンパク質の安定性を測定し、相互作用するタンパク質が類似した挙動を示す点に着目した。そのTPPデータを基にAIを用いて解析することで、多数のタンパク質を同時に比較・監視することを可能にした。

MAP-Xを用いた解析により、ヒト血液中におけるP. falciparumのライフサイクル7段階にわたり、2万件を超えるタンパク質相互作用が確認された。論文の最終著者であるズビネク・ボズデック(Zbynek Bozdech)教授は「MAP-Xによって既知のタンパク質複合体を確認しただけでなく、新たな寄生虫特異的タンパク質複合体と生化学経路の設計図を発見しました」と述べている。第一著者のサミュエル・パジッキー(Samuel Pazicky)博士は「タンパク質複合体を特徴づけることで、薬剤耐性マラリア治療の新たな標的を特定できます」と説明する。また共同研究を率いたティム・ギルバーガー(Tim Gilberger)教授は、MAP-Xが未記載の相互作用や段階特有の動態を明らかにできる点を指摘している。

研究チームは今後、MAP-Xを用いて抗マラリア薬がタンパク質複合体に与える影響を調べるとしている。

(2025年12月12日付発表)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

上へ戻る