この記事は3月10日に、NUS Newsに初掲載されました。
シンガポール国立大学(NUS)は3月10日、理学部の研究チームが、プロバイオティクス由来の天然化合物によってヒトノロウイルスが宿主細胞に付着するのを妨げ、感染を防ぐ可能性を示したと発表した。研究成果は学術誌Food Microbiologyに掲載された。

(出典:NUS)
ノロウイルスは世界で急性胃腸炎の主な原因で、病院や学校、クルーズ船などで大規模な集団感染を引き起こす。承認された抗ウイルス薬やワクチンはなく、治療は主に症状の緩和に限られている。NUSによると、この分野ではウイルスを実験室で安定的に培養できないことが対策開発の大きな壁だったが、研究チームは2023年にゼブラフィッシュ胚モデルを確立し、ヒトノロウイルスを実験室で培養、研究できるようにした。
今回の研究では、細菌が自然に分泌する複合糖質である細胞外多糖に注目した。研究チームは、プロバイオティクス細菌バチルス・サブチリスCU1が産生するレバンがノロウイルス粒子に直接結合し、感染の初期段階で物理的な障壁として働くことを確認した。効果は、世界の流行の多くを占めるGII.4型で認められた。理学部食品科学技術学科のリー・ダン(Li Dan)准教授は「今回の研究結果は、ウイルスが感染を確立する前に阻止できる可能性を示しています」と述べた。
さらに研究チームは、この細菌がニンジンジュースを発酵させることで、ウイルスを阻害する働きを保ったまま保護化合物を高濃度で生産できることも示した。一方で、消費者向け製品や臨床現場での利用に向けては、長期的な安全性と有効性を確かめる追加研究が必要だとしている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部