この記事は3月14日に、NUS Newsに初掲載されました。
シンガポール国立大学(NUS)は3月14日、磁気共鳴画像法(MRI)の画像再構成を支える円周率πの役割と、MRIデータや人工知能(AI)を用いた心臓のデジタルツイン研究について紹介した。

円周率の日(3月14日)を記念してミートパイを作った、レイ・リー(Lei Li)助教授
NUSデザイン・エンジニアリング学部生物医学工学科のデジタルハートラボを率いるレイ・リー(Lei Li)助教授は、医用画像データを使って患者ごとの心臓のデジタルモデルを構築する、物理法則に基づくAIシステムを開発している。研究は、数学理論を診断や治療の判断に役立つ形へ結び付けることを目指すものだ。
MRIは写真のように体内を直接撮影するのではなく、体組織が磁場に反応して出す電磁信号を記録し、周波数や位相の情報を基に画像へ再構成する。この過程ではフーリエ変換が用いられ、πは周波数、位相、周期性を結び付ける式に直接現れる。各検査では、信号取得から位置の対応付け、画像の再構成や精緻化まで、多くの計算がリアルタイムで行われる。

MRIスキャナーは、体組織から放出される電磁信号を捉え、生データとして記録する(中央)。フーリエ変換と呼ばれる数学的手法(式中にπが現れる)を用いて、これらの信号は医用画像に再構成される。
(提供:いずれもNUS)
同助教授のチームは、AIを単なるブラックボックスとして扱わず、空間的な連続性や動きの一貫性、物理的制約を反映したアルゴリズムを設計している。同助教授は「私たちの目標は、AIが数学に取って代わることではありません。私たちのAIアルゴリズムは、画像理論と数理モデルに基づいて構築されており、画像データを心臓機能の解釈可能な指標に変換するものです」と説明した。
研究室では、MRIデータに電気生理学、生体力学、血流の情報を統合した心臓デジタルツインの開発も進めている。同助教授は「高解像度画像処理や高度なAIはすべて、信頼できる数学的基盤に依存しています」と述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部