この記事は3月19日に、NUS Newsに初掲載されました。
シンガポール国立大学(NUS)は3月19日、培養した骨格筋組織が互いに引っ張り合うことで自律的に鍛えられる手法を開発し、その筋肉を搭載したバイオハイブリッド遊泳ロボット「OstraBot」が、骨格筋駆動型として報告例で最速となる毎分467mmの速度で泳いだと発表した。研究成果は学術誌Nature Communicationsに掲載された。

タン・ユージュン(Yu Jun Tan)助教授(右)と研究チームメンバー
(提供:NUS)
バイオハイブリッドロボットは、生きた細胞を動力に使うため、小型でも柔らかく静かに動かせる一方、培養骨格筋の出力が低いことが課題だった。NUSの研究チームは、若い骨格筋細胞が成熟初期に自発的に収縮する性質に着目し、この現象を鍛錬に利用した。
チームは、2つの筋肉組織をスライドブロックで連結し、一方が収縮すると他方が引き伸ばされ、さらにその組織も収縮する仕組みを設計した。これにより、外部電源や制御装置、手作業なしで、成熟初期の1週間にわたり自律的に伸縮運動を繰り返させた。自己鍛錬した筋肉は最大7.05mNの力、8.51mN/mm2の応力を示し、この細胞株を用いたバイオハイブリッドロボットとして最高値を記録したという。
研究を率いたNUSデザイン・エンジニアリング学部機械工学科のタン・ユージュン(Yu Jun Tan)助教授は「この研究の目的は、より速いロボットを作ることだけではなく、この分野における根本的なボトルネックを取り除き、持続可能性を念頭に置いて設計された高性能バイオハイブリッドシステムへの道を開くことでした」と述べた。
チームはさらに、生理学に基づくモデルを用いてOstraBotを設計した。ハコフグに着想を得たこのロボットは、1つの筋肉リングで2本の柔軟な尾を動かし、最適な剛性と3Hzの刺激条件で、通常培養の筋肉を使った同型ロボットの3倍超の速さで遊泳した。電界強度で速度を連続的に調整できるほか、拍手の信号に反応して起動・停止することも示した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部