シンガポール国立がんセンター(NCCS)は4月15日、同センターの研究者が主導した国際共同第3相臨床試験「TROPION-Breast02」において、新規抗体薬物複合体(ADC)であるダトポタマブ・デルクステカン(Dato-DXd)が、未治療の進行トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者の生存改善において重要な進展を示したと発表した。研究成果は学術誌Annals of Oncologyに掲載された。
乳がんは世界の女性におけるがん死亡の主因であり、その約10~20%を占めるTNBCは、特に40歳未満の若年女性に多くみられる侵攻性/急速進行性の高いタイプである。TNBCは早期再発や高い転移リスク、短い生存期間と関連する。PD-L1陽性の腫瘍や生殖細胞系列BRCA変異を有する患者では免疫療法が適用されるが、TNBC患者の約70%は適応外であり、一次治療として化学療法を受けるものの、その効果は限定的である。
本試験では、米国、カナダ、欧州、中国、韓国、日本、シンガポールなどの644人のTNBC患者を対象に、3週間ごとにDato-DXd(6mg/kg)を静脈投与する群323人と、担当医が選択した化学療法を受ける群321人に無作為に割り付けた。対象は18歳以上で、局所再発で手術不能または転移性の未治療TNBC患者のうち、免疫療法の適応外である患者とした。
その結果、一次治療としてのDato-DXdは、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)の双方において臨床的に意義のある有意な改善を示した。PFS中央値は10.8カ月で、化学療法群の5.6カ月と比べてほぼ2倍に延長された。OS中央値も23.7カ月と、化学療法群の18.7カ月を上回った。全奏効率はDato-DXd群で63%と、化学療法群の29%に比べて高く、奏効期間中央値もそれぞれ12.3カ月、7.1カ月であった。
Dato-DXdは現在、切除不能または転移性TNBCの一次治療として、米国食品医薬局(FDA)およびシンガポール保健科学庁で審査が進められている。同センターの臨床担当副最高経営責任者兼医療腫瘍部門上級コンサルタントであるレベッカ・デント(Rebecca Dent)教授は、「本剤はトリプルネガティブ乳がんに対し、生存期間の改善と高い奏効率を示しており、新たな治療手段となる可能性があります」と述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部