この記事は4月20日に、NUS Newsに初掲載されました。
シンガポール国立大学(NUS)は4月20日、同大学がん科学研究所(CSI Singapore)の研究チームが、タンパク質同士がどのように認識し結合するかという相互作用を高精度に予測する人工知能(AI)モデルを開発したと発表した。研究成果は学術誌Nature Communicationsに掲載された。

PPLMのAIモデルは、タンパク質がお互いをどのように認識し結合するかを高精度に予測する
タンパク質間相互作用は、細胞内のほぼすべての機能を支える基盤である。しかし従来のAIモデルの多くは、単一のタンパク質配列のみを対象として学習しており、タンパク質同士の関係性や結合の仕組みを十分に捉えられないという制約があった。こうした課題に対し、CSI Singaporeの主任研究員であるチャン・ヤン(Zhang Yang)教授が率いる研究チームは、相互作用する2つのタンパク質配列を同時に学習する「ペア型タンパク質言語モデル(PPLM)」を開発した。
PPLMは300万組以上のタンパク質ペアのデータを用いて訓練され、各タンパク質の特徴に加え、相手に応じて変化する相互作用の特徴も同時に捉えることができる。この仕組みに基づき、タンパク質同士が相互作用するかどうかを予測する「PPLM-PPI」、結合の強さを推定する「PPLM-Affinity」、相互作用が起こる部位を特定する「PPLM-Contact」の3つのモデルが開発された。

(提供:いずれもNUS)
ベンチマーク評価では、既存の手法と比較して最大約17%の精度向上を達成し、複数の生物種においても一貫した性能の改善が確認された。特に抗体と抗原の相互作用のような複雑なケースにおいて、配列情報に基づく手法と立体構造に基づく手法の双方を上回る性能を示した。また、実際のタンパク質相互作用と一致する特徴的なパターンを捉えていることも示された。
同モデルは、細胞内に存在する全タンパク質を対象とした大規模な相互作用解析や、創薬標的の特定、治療法の設計などへの応用が期待される。本研究を主導したチャン教授は「本研究は、単一タンパク質の解析から相互作用を考慮したモデリングへと進展させるものであり、多タンパク質複合体の予測やシステムレベルの生物学、AIによる治療設計の発展に寄与するものです」と述べている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部