シンガポールの南洋理工大学(NTU)は5月26日、同大学の研究者らが、軟らかく凹凸のある表面を移動し、5つの手術機能を無線で実行できる種子サイズの小型ロボットを開発したと発表した。研究成果は学術誌Advanced Materialsに掲載された。
(出典:NTU)
ロボットは長さ4.4 mmで、弱い磁場により制御される。移動、生体組織の切断、薬剤放出、組織試料の把持・保管、遠隔発熱のいずれかを実行でき、機能の切り替えは1秒未満で行える。研究を率いたNTU機械・航空宇宙工学部のルム・グォ・ザン(Lum Guo Zhan)准教授は、磁気コイルでロボットを遠隔制御し、微小な刃による組織切断や、がん治療で研究されている熱利用法に関わる標的部位での発熱などを実行させた。
複数機能を数mmのロボットに収めるため、チームは磁場で作動し1秒未満で再プログラムできる運動制御装置を開発した。ロボットはシリコーン系の軟磁性材料PDMSとEcoflexで作られ、5 µmの磁性微粒子を埋め込んだ。中心の磁気モジュールは異なる方向に磁化、脱磁、再磁化でき、それぞれの磁化方向が切断や把持など別の機能を作動させる。同じ磁場でも一部だけが反応するよう設計し、小型磁気ロボットが全体で反応しやすい制約にも対応した。従来型に多い3軸移動と2方向回転に加え、長軸周りのローリングも可能にし、体内の狭く不規則な空間での位置決め精度を高めた。
チームは鶏肝臓などの生体組織モデルと軟組織を模擬するゼラチン材料で手術機能を試験し、組織切断、粒子放出、試料把持・保管、局所発熱を確認した。ヒト皮膚細胞を用いた生体適合性評価では、材料曝露後も99%超の細胞が生存し、材料の毒性はおおむね低いことが示された。
同准教授は、外科医と連携して臨床現場への組み込み方を探っており、「これらのロボットを実用化に近づけるには、実験室での機能だけでなく、現実的な医療環境でどのように誘導、監視、制御できるかを理解する必要があります」と述べた。国立大学病院の神経内科部門シニアコンサルタント、ヨー・レオン・リット・レナード(Yeo Leong Litt, Leonard)博士は、同ロボットが薬剤送達、生検、治療用熱の遠隔投与などを担い、インターベンショナル・ラジオロジー手術の多くを置き換える可能性があると評価した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部