シンガポールの南洋理工大学(NTU)は6月5日、同大学リーコンチアン医学部(LKCMedicine)の研究者らが、血管性認知症の進行を遅らせる新たな治療標的となり得るタンパク質を特定したと発表した。研究成果は学術誌Nature Communicationsに掲載された。

(出典:NTU)
血管性認知症は、認知症の中で2番目に多い病型である。加齢と関連することが多いこの疾患は、脳への血液供給が低下することで起こる。今回の研究は、脳内での異常な血管形成を阻害することにより、血管性認知症の進行を遅らせられる可能性を示した。
NTUリーコンチアン医学部のクリスティン・チャン(Christine Cheung)准教授が率いる研究者らは、血管性認知症のマウスを用いた研究で、脳への血液供給の障害が異常な血管の増殖を引き起こすことを示した。この過程は、内皮PASドメインタンパク質1(EPAS1)と呼ばれるタンパク質によって駆動される。研究者らは、EPAS1を阻害すると、脳への正常な血流が回復することを確認した。
研究者らはさらに、ヒトの脳血管疾患患者では、血管損傷が重いことも観察した。脳血管疾患は、脳の血管に影響を及ぼし、血管性認知症や認知機能低下につながる疾患である。
研究チームは今後について、EPAS1を標的とする薬剤を開発することで、血管性認知症や、脳への血流を妨げるその他の疾患の進行を遅らせられる可能性があるとしており、新薬開発につながる可能性がある。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部