シンガポールの南洋理工大学(NTU)は6月8日、同大学の研究者らが水中でも明るさと安定性を保つ新型ペロブスカイト・ナノ結晶を開発したと発表した。研究成果は学術誌Advanced Materialsに掲載された。

(出典:NTU)
ハロゲン化物ペロブスカイト・ナノ結晶は、鮮やかな色と強い発光で知られる半導体ナノ結晶で、量子技術やイメージングへの応用が期待されている。一方、ごくわずかな水分にさらされるだけで急速に分解するため、生物学的環境や水系環境での利用が制限されていた。
NTU高等研究所所長兼NTU理学部副学部長(研究)のサム・ツィ・チェン(Sum Tze Chien)教授が率いる研究チームは、通常はナノ結晶表面の保護に用いられるオレイルアンモニウムハロゲン化物分子を転用した。水中でナノ結晶の周囲に保護用の二重層シェルを形成するプロセスを進めることで、ナノ結晶の明るさを維持したまま分散状態と安定性を保つことを可能にした。
処理後のナノ結晶は、極めて低い濃度でも高い輝度を維持し、吸収した光の80%を再放出した。水分で分解しやすい材料を水中でも扱えるようにした点は、量子技術やバイオイメージング応用に向けた大きな前進と位置付けられる。
本研究の筆頭著者でNTU物理・数学科学部の上級研究員であるホー・ホアジュン(He Huajun)博士は、高度に希釈されながらも明るく、水中で安定なペロブスカイト量子エミッターを作製できることは、水系環境でのセンシングやフォトニクス応用に新たな道を開く可能性があると説明した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部