シンガポールの南洋理工大学(NTU)は6月23日、同大の研究者らが古典的な光学現象「ポアソンスポット」を用い、光の安定したパターンである光スキルミオンを生成したと発表した。研究成果は学術誌Opticaに掲載された。

シェン・イージエ(Shen Yijie)助教授
(出典:NTU)
光スキルミオンは、光の性質に現れる小さな渦状の配置で、ハリネズミの針のような構造に例えられる。スキルミオンは情報保存への応用が期待され、将来のデータ記憶、通信、コンピューティングシステムにつながる可能性から注目されている。従来の研究では、通常の材料では難しい方法で光を制御する人工的な微小構造であるメタマテリアルを用いて、光スキルミオンを生成してきた。
今回、NTU物理数学学部と電気電子工学部のシェン・イージエ(Shen Yijie)助教授が率いる研究チームは、複雑で高価な人工材料の代わりに、小さな円盤にレーザーを照射した。レーザーなどのコヒーレント光源で円形物体を照らすと、影の中心に明るい点が現れる。これがポアソンスポットで、19世紀初頭に光の回折と波としての振る舞いを示した歴史的実験として知られる。
研究チームは、このポアソンスポットを用いた系が、スピンスキルミオン、ストークススキルミオン、電場スキルミオン、磁場スキルミオンという関連するトポロジカルな場のパターンを最大4種類、同時に生成することも見いだした。スピンは光の回転のような性質を、ストークスパラメーターは光波が進む際の振動方向、すなわち偏光状態を表す。研究者らのシミュレーションでは、これらの構造は矢印が渦を巻く配置として現れ、ポアソンスポット全体で光の異なる性質がどのように方向を変えるかを示した。
同助教授は「高価で複雑な人工メタマテリアルや高度に専門的な技術に頼らず、光が物体の周囲で曲がるという単純な効果で光スキルミオンを生成できる点が注目されます」と説明する。今回の基礎的な発見は、トポロジカル光のさらなる研究の土台となり、フォトニクス、先端材料、情報処理、コンピューティングにおける将来の物理応用を支える可能性がある。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部