シンガポールの南洋理工大学(NTU)は7月16日、エルニーニョ現象の強まりと東南アジア諸国連合(ASEAN)南部の乾季に伴う降雨量の減少により、シンガポールでは7~10月、特に8、9月に越境煙害のリスクが高まるとして、公衆衛生を守るため地域社会に早期の備えが必要だと発表した。
ASEAN南部では乾季が始まり、エルニーニョ現象の強まりと降雨量の減少が重なることで、地域全体、特にインドネシアの火災が起きやすい地域で野火の発生地点が増えると予想される。卓越した南西モンスーンが煙をシンガポール方面へ運ぶ可能性があるため、7~10月には煙害が発生しやすくなる。
シンガポールの国家環境庁(NEA)は、エルニーニョ現象によって乾季が長期化すれば、越境煙害が発生する可能性とその継続期間がさらに増す恐れがあると警告した。シンガポール国際問題研究所も高リスク警報を出し、シンガポール、ブルネイ、インドネシア、マレーシアでは年後半に深刻な煙害が発生する可能性を指摘した。これを受け、複数機関で構成するシンガポールの煙害対策タスクフォースは、大気質が悪化した場合に迅速に対応するための準備措置を開始した。
NTU気候変動と環境衛生センター(CCEH)のヤン・ホン(Yan Hong)所長・教授は「地域社会は煙害が悪化する前に備える必要があります。家庭用空気清浄機のHEPAフィルターが有効に機能していることを確認すれば、室内の空気をより清浄に保つのに役立ちます。特に屋外活動を計画する際には、汚染物質標準指数(PSI)や1時間ごとのPM2.5濃度など、最新の大気質情報も確認すべきです」と述べた。
また、高齢者、子ども、妊婦、呼吸器疾患や心血管疾患のある人には一層の予防措置が必要だとし、大気質が健康に有害な水準に達した場合は激しい屋外活動を減らすこと、可能なら運動を屋内で行うこと、必要な医薬品をすぐ使えるようにしておくこと、屋外に出ることを避けられない場合に備えて顔に適切に密着するN95マスクを用意することを勧めた。同教授は、気候変動によって極端な暑さと大気汚染などの複合的な気候災害が増えるなか、公衆衛生を守るには地域社会の備えの強化が不可欠だと強調した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部