この記事は7月26日に、NUS Newsに初掲載されました。
シンガポール国立大学(NUS)は7月26日、同大学人文社会科学部が、マングローブを自然がもたらす重要な気候インフラと捉え、相互につながる沿岸生態系の再生に取り組むとともに、野外学習を通じて自然保全を担う次世代を育成している地理学者の活動を紹介した。

グレッチェン・コフマン(Gretchen Coffman)博士は、2026年1月にインドネシアのビンタン島で行われたマングローブ再生プロジェクトに参加した
NUS人文社会科学部の地理学者で上級講師のグレッチェン・コフマン(Gretchen Coffman)博士は、山、河川、マングローブ、海草藻場、サンゴ礁を一つの生きたシステムとして捉える「根からサンゴ礁まで」という考え方を研究と教育の基盤とする。ウビン島でマングローブを再生するほか、東南アジア各地の調査では、ドローンと3Dマッピング技術を使って沿岸生態系の詳細なデジタルモデルを作成している。
シンガポールでは、かつて海岸線の約13%をマングローブが縁取っていたが、現在残る生息地は国土の1%未満である。一方、真正マングローブは35種に上り、世界最多の約48種を擁するインドネシアに迫る。スンゲイ・ブロー自然公園ネットワークやウビン島のスンゲイ・ドリアンなどを通じ、孤立した区域を個別に保全する段階から、つながりを持つ沿岸生態系の再生へと移行している。

コフマン博士(右から6番目)とNUSの学生たちは、2025年にインドネシアのロンボク島で、マタラム大学の同僚たちと共に、沿岸生態系再生プロジェクトの一環としてマングローブの植樹を行った。
(提供:いずれもNUS)
マングローブは、水に浸かった深い土壌に炭素を効率よく蓄えるほか、波のエネルギーや高潮の衝撃を弱め、海岸線を安定させる。さらに、汚染物質をろ過し、水産生物の育成場を提供する。同博士は、海面上昇に対する将来の回復力を高めるには、自然を活用した気候変動対策として工学技術と健全な生態系を組み合わせる必要があると指摘する。
同博士の授業では、学生が劣化したマングローブ生息地を選び、潮汐、堆積物、生物多様性、地域社会、長期管理を踏まえた再生案を作る。野外では鳥の声や泥の下でカニが立てる音に耳を澄ませ、相互につながる生態系を体感する。同博士は「人は理解したものを守り、その理解は多くの場合、体験から始まります。誰もが少なくとも一度はマングローブ林を体験してほしいと思います。その魅力を体験すれば、守りたいと思わずにはいられないでしょう」と語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部