シンガポールの南洋理工大学(NTU)は8月5日、同大学機械・航空宇宙工学部の研究者が、原子1個分の厚さの二次元窒化ガリウム(2D GaN)について、強い電界下では特定の欠陥が電子的安定性を高める可能性をシミュレーションで示したと発表した。研究成果は学術誌ACS Nanoに掲載された。

GaNの応用例に関するインフォグラフィック
研究を行ったティエン・ユージア(Tian Yujia)博士は、同学部のリサーチフェロー在任中、2D GaNの性質を調べた。現代の半導体で主流のシリコンは、機器の小型化と高出力化に伴い、発熱とエネルギー損失が増えるという物理的限界に近づいている。窒化ガリウム(GaN)はシリコンより高い電圧に耐え、高速にスイッチングし、効率良く動作する。既に電気自動車や小型急速充電器に使われ、データセンター、電力網、5Gや6G通信でも採用が進む。

化学合成した2D GaNシートの異なる位置(a~d)で取得した高分解能透過電子顕微鏡(HRTEM)像。Sahu et al. (2023)より転載
同博士は、欠陥、ひずみ、電界が同時に作用する現実的な条件で2D GaNをモデル化した。その結果、2D GaNの電子的挙動を変化させるには、化学組成が同じバルクGaNの約30倍の電界が必要だと判明した。これは量子閉じ込めによって材料特性が大きく変わり、2D GaNが電気自動車用充電器や電力網の高電圧環境でも信頼性を保てる可能性を示す。

ティエン博士による2D GaNの研究の概要
また、特定の欠陥は強い電界下で電子的安定性を高め、ひずみは欠陥を形成しやすくするとともに、より弱い電界で電子状態の変化を引き起こした。精密に調整した電子ビームのエネルギーを変えれば、窒素原子かガリウム原子の一方を選んで除去し、欠陥を作れる。避けられない欠陥を排除せず設計に利用することで、不合格チップと製造コストを減らせる可能性がある。制御した圧縮ひずみを加えると低電圧で状態を切り替えられるため、既存の産業用ひずみ工学技術による省エネルギー機器への応用も見込まれる。

2D GaNの欠陥設計に用いる電子線照射の概略図
(出典:いずれもNTU)
今後は実験室で予測を検証し、温度や磁場を含む条件へ研究を広げる。同博士は欠陥について、「有益な機能を引き出すため、意図的に導入し、設計することができます」と説明した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部