この記事は8月19日に、NUS Newsに初掲載されました。
シンガポール国立大学(NUS)は8月19日、同大学の研究者らが航空機などに使われるリサイクル困難な炭素繊維・エポキシ複合材料の廃棄物全体を、断熱、吸音、流出油の回収に利用可能な軽量エアロゲルへ転換する手法を開発したと発表した。研究成果は学術誌Waste Managementに掲載された。

筆頭著者のゴ・ミン・クアン・ファン(Ngo Minh Quang Phan)氏(左)と、研究を率いたドゥオン・ハイ・ミン(Duong Hai Minh)准教授。NUSの研究チームが開発した炭素繊維・エポキシエアロゲルとともに。
炭素繊維・エポキシ複合材料は、軽量で強度が高く、耐食性にも優れるため、航空宇宙、風力エネルギー、自動車、船舶分野で広く使われる。しかし、熱硬化性ポリマーであるエポキシは、硬化後に溶融して再成形できず、リサイクルが難しい。従来法は主に炭素繊維の回収に重点を置き、エポキシ樹脂は分解・廃棄されるか、価値の低い副産物として扱われる。高温や強力な化学薬品、大量のエネルギーを要する方法もある。

ゴ・ミン・クアン・ファン(Ngo Minh Quang Phan)氏が、凍結乾燥機を使用して炭素繊維・エポキシエアロゲルの試料を作製している。
(提供:いずれもNUS)
研究チームは、廃棄物を機械処理して微粉末と短い繊維片の混合物にし、セルロース系結合剤のカルボキシメチルセルロースと混ぜ、凍結乾燥した。これにより、微細な連続気孔を持ち、大部分を空気が占める軽量のスポンジ状エアロゲルを形成した。実験では低い熱伝導率と効果的な吸音性能を示した。撥水処理後には大量の油を吸収し、流出油の回収や油水分離への利用可能性も示した。線維芽細胞を用いた試験では、研究条件下で毒性は認められなかった。
研究を率いたNUSデザイン・工学部機械工学科のドゥオン・ハイ・ミン(Duong Hai Minh)准教授は、炭素繊維とエポキシの両方を利用すれば、この廃棄物をより価値の高い機能性材料に変えられると説明した。筆頭著者のゴ・ミン・クアン・ファン(Ngo Minh Quang Phan)氏らのチームは現在、航空宇宙、先端材料、製造、廃棄物管理分野の関係機関との連携を模索している。今後は技術の大規模化と、産業利用に向けた環境面・経済面での性能評価に取り組む。
同准教授は「先端複合材料は、多くの産業で構造物の軽量化と高効率化を可能にしてきました。次の段階は、耐用期間を終えたこれらの材料を持続可能な方法で管理できるようにすることです」と語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部