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傷んだミトコンドリアの分解をコレステロールが支える シンガポール南洋理工大学

シンガポールの南洋理工大学(NTU)は9月23日、同大学リーコンチアン医学部(LKCMedicine)の研究者らが、傷んだミトコンドリアを分解する際、コレステロールがリソソームの膜を補強し、分解機能を維持する仕組みを明らかにしたと発表した。研究成果は学術誌Nature Communicationsに掲載された。

NTUのヤン・ハオニン(Yang Haoning)博士(左)と佐伯恭範(Yasunori Saheki)准教授。両氏は、細胞内のリサイクルを支えるコレステロールの重要性を発見した研究チームの一員である。

ミトコンドリアは細胞の活動に必要なエネルギーを生み出すが、傷んだものを放置すると、有毒な断片が細胞死を引き起こしかねない。細胞は「マイトファジー」によって傷んだミトコンドリアを包み込み、強い酸性のリソソームへ送る。リソソームの酵素がこれを再利用できる材料に分解するが、酸性を保ちながら破裂せずに分解を続けられる仕組みは分かっていなかった。

共同筆頭著者のNTU研究員ヤン・ハオニン(Yang Haoning)博士と、現在は長崎大学准教授の松久幸司(Koji Matsuhisa)博士らは、生きた細胞を画像で観察した。傷んだミトコンドリアがリソソームに入ると、酵素PI4KIIαがその表面にシグナル脂質PI4Pを目印として付ける。引き寄せられた輸送タンパク質OSBPは、小胞体(ER)からリソソームの膜へコレステロールを運ぶ。細胞はERでの一時的なコレステロールの不足を感知し、その生産も増やす。

高度な顕微鏡画像解析を用い、細胞内のリサイクル施設の働きを維持する上でコレステロールが重要であることを発見した、NTUのヤン・ハオニン博士(左)と佐伯恭範准教授

ミトコンドリアの膜が分解されると、遊離脂肪酸が大量に放出される。細胞は、遊離したままでは有毒になり得る脂肪酸を「脂肪滴」に蓄え、将来利用するためのエネルギー源として貯蔵する。実験でコレステロールの輸送や合成を妨げると、リソソームは酸性を失って脆弱になり、破裂しやすくなって、傷んだミトコンドリアを分解できず、脂肪滴も形成できなかった。

左上から時計回りに、ディラン・ホン・ジェン・コー(Dylan Hong Zheng Koh)博士、佐伯恭範准教授、ヤン・ハオニン博士、西 航(Wataru Nishi)博士。4人は、コレステロールが細胞の働きを支える上で重要であることを発見したリーコンチアン医学部(LKCMedicine)の研究チームの一員である。
(出典:いずれもNTU)

責任著者で同学部の佐伯恭範(Yasunori Saheki)准教授は、コレステロールによる膜の補強がリソソームの耐久性と消化機能を保つと説明する。ヤン博士は「脂質の輸送がリソソームを守る仕組みを明らかにしたことで、加齢に伴う細胞の健康維持を目指す新たな治療標的の可能性が開かれます」と述べた。この成果は、パーキンソン病やアルツハイマー病などの神経変性疾患を理解する上でも重要だという。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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