シンガポールの南洋理工大学(NTU)は9月23日、同大学の研究者らが橋や建物などの構造物にかかる応力を色の変化で可視化するポリマーセンサーを開発し、応力の集中箇所と程度を目で確認できるようにしたと発表した。研究成果は学術誌Advanced Scienceに掲載された。

色が変わるセンサーの試料を手にする、南洋理工大学(NTU)のガン・キム(Gun Kim)助教授(左)と、博士課程学生のスンゴ・ベク(Seungo Baek)氏(右)。(写真:NTU工学部)
開発したのは、NTU土木環境工学部のCross-Ultrasound Research(CURE)研究室に所属するガン・キム(Gun Kim)助教授と、博士課程学生のスンゴ・ベク(Seungo Baek)氏である。研究チームは、絡み合ったポリマーのネットワークに検知機能を直接組み込んだ。センサーは応力の大きさに応じて異なる色を示し、応力が増すと寒色系から警告を示す赤色に変わる。技術者は複雑なグラフやデータを分析せずに構造物の状態を判断し、詳しい点検や早急な対応が必要な箇所を特定できる。
従来のセンサーの設置には電源、電池、配線などが必要で、継続的な保守も費用を増やす。今回のセンサーは電池や配線、複雑な監視システムを使わず、構造部材としても機能する。論文の筆頭著者であるベク氏によると、土木工学のセンサーの多くはひずみか応力の一方を測定する設計だが、今回のセンサーは両方を測定できるという。
同助教授はイリノイ大学カール・イリノイ医科大学での博士研究員時代に、生体音響学、ポリマー力学、治療用超音波イメージングに取り組んだ。今回のセンサーには、構造物の健全性監視、ポリマーのメカノケミストリー、集束超音波の知識を組み合わせた。土木工学で得た着想を、人体の超高解像度スキャンや、薬剤と粒子の狙った作動を可能にする新たな基盤技術の設計にも生かしているという。

インフラの監視に用いるスマートポリマーセンサーを研究する実験室でのキム助教授とベク氏。(写真:NTU工学部)
(出典:いずれもNTU)
橋やケーブルなどへの応用が考えられ、色の変化によって、大規模な修理が必要になったり安全上の危険に発展したりする前に、問題を発見できる可能性がある。研究チームは現在、単体の試験試料から、より大きな構造部材への発展に取り組んでいる。同助教授は「応力が増すと色がはっきり変わるので、技術者は注意が必要な箇所をすぐに把握できます」と語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部