シンガポールの南洋理工大学(NTU)は9月26日、同大学生物科学部の研究者らが植物の免疫受容体の配置を調整し、自然な防御反応を強める方法を開発したと発表した。研究成果は学術誌Science Advancesに掲載された。

実験室でモデル植物とともに写る南洋理工大学(NTU)のミャオ・ヤンソン(Miao Yansong)教授。研究チームは生物工学的手法を用いて、この植物の免疫反応を強めた。
(出典:NTU)
研究チームは、チョイサムやカイランと同じアブラナ科のモデル植物、シロイヌナズナで実験した。免疫を強化した植物では、病原体感染試験で測定した細菌数に基づくと、細菌の増殖が対照植物より約53%少なかった。免疫反応を強めても、通常の成長には影響しなかった。
植物の細胞表面には、細菌などの微生物の兆候を検知する免疫受容体がある。研究チームは、多くの細菌に関連するタンパク質「フラジェリン」を検知する受容体FLS2に着目。単一分子イメージングとタンパク質工学を用い、FLS2と協働する受容体のさまざまな集まり方を調べた。
その結果、FLS2を2個、協働する受容体を2個集めた配置で最適な反応が得られた。免疫シグナルが強まる一方、役割を終えた受容体の除去と更新も通常どおり進んだ。受容体を集めすぎると初期反応は強まるが、更新が妨げられ、防御力を長く維持できなかった。最適な配置では、植物の防御システムを複雑に組み替えることなく、病原体の初期検知能力を高め、既存の免疫防御をより効果的に働かせた。
研究を率いた同学部のミャオ・ヤンソン(Miao Yansong)教授は、受容体の集まり方を制御するタンパク質工学の手法と、生きた植物細胞の表面に集まった受容体の数を測る画像解析技術について特許を出願した。研究チームは葉物野菜などへの応用を目指すが、商業利用には作物ごとに受容体と最適な配置を特定し、設計・試験する必要がある。生育中の作物に直接施せる添加剤も検討している。同教授は「適切な数の見張り役がいれば侵入者を見つけて素早く対応しやすくなりますが、多すぎると互いの邪魔になります」と説明した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部