シンガポールの南洋理工大学(NTU)は9月29日、同大学の研究者らが、動物、植物、菌類、細菌などの種を横断した体系的な解析に基づき、タンパク質の「相分離」をより正確に予測・解析するための、人工知能(AI)を活用した2つのプラットフォームを開発したと発表した。研究成果は学術誌Molecular Plantに掲載された。

左から、IDMxS研究員のリャン・チーユー(Liang Qiyu)博士とミャオ・ヤンソン(Miao Yansong)教授
(出典:NTU)
研究は、NTU生物科学部とデジタル分子分析・科学研究所(IDMxS)のミャオ・ヤンソン(Miao Yansong)教授が主導し、同大学電気電子工学部のガオ・ウェイボ(Weibo Gao)教授と共同で実施した。相分離では、細胞内のタンパク質が水中の油滴のように分離し、液滴状の区画に集まる。これにより分子が集まり、反応を促進・抑制してストレスに迅速に応答できる。相分離の変化は、がんやアルツハイマー病などと関連し、植物ではストレス応答の障害や病原体への免疫低下と関連する。
既存のデータ集は全長タンパク質に偏り、相分離しないことを確認した実験結果や短縮型、変異体が少なく、予測モデルが相分離しやすさを過大評価しがちだった。研究チームは大規模言語モデルでPubMed収録論文から実験情報を抽出し、手作業で確認した。構築したデータベース「PLATO」には、相分離する3600種以上と、しない1300種を含む5118の重複しないタンパク質配列を収録し、短縮型や変異体、人為的な改変体も含めた。
相分離するタンパク質の相互作用を解析するプラットフォーム「PhaseHub」では、既開発の機械学習アルゴリズム「MolPhase」による1106種の生物の相分離タンパク質の予測を、タンパク質の存在量や相互作用の実験データと統合した。タンパク質の検索や配列入力により、予測される相分離特性の確認や、起こり得る相互作用の可視化ができる。核を持つ真核生物では、細菌などより相分離し得るタンパク質の割合が大幅に高かった。また、ゲノムサイズが小さい範囲では、その増大に伴って相分離し得るタンパク質の割合も増加したが、その後は頭打ちとなった。
これらのツールは、疾患や老化の研究、作物改良への応用が期待される。両論文では、IDMxS研究員のリャン・チーユー(Liang Qiyu)博士が筆頭著者を務めた。ミャオ教授は「これらのツールは、農業やヒトの疾患における、こうしたタンパク質の役割の解明を進めるでしょう」と述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部