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2026年「中国大学ランキング」に見る安定構造と漸進的変化

松田侑奈(JSTアジア・太平洋総合研究センター フェロー) 2026年05月19日

 上海軟科は毎年、「軟科中国大学ランキング(软科中国大学排名)」を発表しており、2015年に初めて発表されてから、中国の大学を評価するランキングの一つとして幅広い注目を集めている。このほど、2026年度版 が公開されたので、本稿では若干の解説を加える。

トップ構造の固定化:12年連続の不動の三強

 2026年の総合ランキングでは清華大学、北京大学、浙江大学が引き続きトップ3を占めた。これで12年連続の同一順位となり、中国トップ大学の構造的安定性が改めて確認された。

 さらに、上海交通大学(4位)、復旦大学(5位)もトップ5を維持し、トップ10には南京大学、中国科学技術大学、武漢大学、華中科技大学、西安交通大学が並ぶなど、上位層の顔ぶれはほぼ固定化している。

 このような「変化のなさ」は、単なる停滞ではなく、国家主導による重点投資と制度設計が長期的に機能している結果と捉えるべきである。すなわち、中国の大学振興策の中核を担う「双一流」政策の建設が2015年に発表され、この政策に基づく一流大学、一流学科が厳正な評価により2017年に選定されたが、これは固定的なものではなく、第1期(2016年~2020年)の期間中に適宜、中間評価や最終評価がなされ、2022年には第2期の双一流の大学、学科が新たに選定された。また、「双一流」政策により、トップ大学群には研究資源・人材・国際連携の面で中央政府や地方政府による資金面、政策面の支援が継続的に行われている。このように、国の基本政策に基づき、優れた大学や学科の厳正な選定と継続的な評価がなされ、選定された大学、学科に継続的な支援を行うことで、結果として、厳しい競争環境の中でトップの大学、学科は持続的な優位を確保し、その蓄積がランキングに反映され続けているのである。

大都市部の大学中堅層の底上げ:静かな順位上昇の広がり

 一方で、注目すべきはトップ層の下に位置する中堅大学群の動きである。上海を例に取ると、同済大学(18位)がトップ20圏内を維持する中、華東師範大学(29位)、華東理工大学(42位)、上海大学(60位)、東華大学(72位)などが前年より順位を上げている。

 また、新興の研究型大学である上海科技大学(47位)が安定してトップ50圏内に位置している点も重要である。これは、中国において従来型の総合大学とは異なる「新型研究大学モデル」が一定の成功を収めていることを示唆している。上海を例にとっているが、深圳を含む粤港澳大湾区(広東・香港・マカオ・グレーターベイエリア)のような急速に発展する大都市圏においても、研究資源や人材の集積を背景に、中堅大学の順位上昇が広がる傾向がみられる。

非「双一流」大学の台頭:裾野の拡大

 さらに、非「双一流」大学の一部にも着実な上昇が見られる。「双一流」大学は中央政府が重点的に支援する選定大学群(一流大学および一流学科に選定された大学を含め約140校)であり、上海では、上海理工大学(106位)や上海師範大学(123位)などがトップ140圏内に位置しており、従来の重点支援の枠外にある大学群の中でも上位層への進出がみられる。

 前節及び本節に見られる上海のような大都市部での中堅や裾野の大学のランキングの上昇は、従来の中央政府による重点大学への集中的支援に加え、大都市部における高度人材需要の拡大や、地方政府の財政力を背景とした高等教育投資の強化が影響しているとみられる。特に、応用分野や産業連携を重視した教育・研究を担う大学の存在感が徐々に高まっている点は、中国の産業構造の高度化とも連動した動きと位置づけられる。

分野別ランキング:専門特化型大学の安定優位[1]

表1 医学系ランキングTOP5
順位 名称 所在地 総合ランキング上の位置
1 北京協和医学院 北京市 14位相当
2 首都医科大学 北京市 37位相当
3 南方医科大学 広東省 42位相当
4 南京医科大学 江蘇省 45位相当
5 天津医科大学 天津市 60位相当
表2 財政系ランキングTOP5
順位 名称 所在地 総合ランキング上の位置
1 上海財経大学 上海市 35位相当
2 中央財政大学 北京市 42位相当
3 対外経済貿易大学 北京市 57位相当
4 中南財政政法大学 湖北省 57位相当
5 西南財政大学 四川省 66位相当
表3 語学系ランキングTOP5
順位 名称 所在地 総合ランキング上の位置
1 北京外国語大学 北京市 79位相当
2 上海外国語大学 上海市 81位相当
3 中国伝媒大学 北京市 82位相当
4 外交学院 北京市 105位相当
5 北京言語大学 北京市 119位相当
表4 法学系ランキングTOP5
順位 名称 所在地 総合ランキング上の位置
1 中国政法大学 北京市 56位相当
2 華東政法大学 上海市 119位相当
3 西南政法大学 重慶市 124位相当
4 中国人民公安大学 北京市 139位相当
5 西北政法大学 陝西省 185位相当

 分野別ランキングでは、専門特化型大学の優位性が引き続き明確である。医薬系では北京協和医学院が首位を維持し、財政系では上海財経大学がトップ、語学系では北京外国語大学が首位を占めた。また、法学系では、中国政法大学(1位)や華東政法大学(2位)など、同一分野内における上位校間の競争も継続しており、順位に大幅な変動はないものの、質的な競争はむしろ強まっているといえる。こうした競争は全国レベルで展開される一方、これらの有力校が北京や上海などの大都市に集積している点も特徴的である。

 この領域では、「規模」よりも「専門性」と「ブランド力」が順位を左右する傾向が強く、総合大学とは異なる評価軸が明確に機能している。

国際化モデルの進展:中外合作大学の存在感

表5 中外合作大学系ランキングTOP5
順位 名称 所在地 総合ランキング上の位置
1 香港中文大学(深圳) 広東省 39位相当
2 寧波ノッティンガム大学 浙江省 65位相当
3 上海ニューヨーク大学 上海市 78位相当
4 昆山デューク大学 江蘇省 95位相当
5 西交リバプール大学 江蘇省 102位相当

 中外合作大学(中国と外国大学による共同設立大学)の分野では、香港中文大学(深圳)が中外大学ランキングの首位を維持し総合でも39位相当にランクを上げたほか、中外合作大学ランキング3位の上海ニューヨーク大学が総合78位相当にランクインするなど、国際連携型大学の存在感も着実に高まっている。

 これらの大学は、教育カリキュラムや運営体制において国際標準を取り入れており、中国国内における高等教育の多様化を象徴する存在である。同時に、海外大学との制度的接続点として、人材育成・研究連携の両面で重要な役割を果たしている。

評価指標の進化:ランキングの高度化

 今年のランキングでは、評価指標の拡充も見逃せない。特に科研プラットフォームの評価において、「一帯一路」共同実験室や部委レベルの重点研究拠点(各省庁・中央官庁が認定する重点研究拠点)などが新たに組み込まれた点は重要である。

 これは単なる論文数や引用数にとどまらず、「国家戦略との接続性」や「研究基盤の質」をより重視する方向へのシフトを意味する。ランキング自体もまた、中国の科学技術政策の変化を反映する"鏡"として進化しているといえる。

変わらなさの中にある構造転換

 2026年のランキングは、「大きくは変わらないが、確実に動いている」という特徴を持つ。トップ層の固定化は依然として顕著である一方、その下では大都市部の中堅大学の底上げ、新型研究大学の台頭、非重点大学の成長、専門大学の安定競争、国際化モデルの拡大といった、多層的な変化が同時進行している。従って、本ランキングを分析する際には、単純な順位変動ではなく、「どの層で、どのような質的変化が起きているのか」という視点が不可欠である。中国の高等教育はすでに量的拡大の段階を超え、構造的高度化と多様化のフェーズに入っており、その成熟の姿が本ランキングにも色濃く反映されている。


[1] 分野別ランキングで、「総合ランキング上の位置」として「〇位相当」としたのは、総合ランキング表には順位が付されていないが、分野別ランキングには参考順位として「総合〇位」と表記されているためである。例えば、北京協和医学院は総合ランキング表では順位が付されず、14位と15位の間に表示されているが、分野別ランキングでは参考順位として「総合14位」となっているため、14位相当と記載した。

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