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知識がワンクリックで得られる時代、教師はどうするべきか

夏 天一(科技日報記者) 2026年06月26日

 現在、多くの学生は勉強中に分からないことがあると、大規模AI(人工知能)モデルに質問するだけで、整理された回答を得ることができる。しかし、学生の疑問を解消することは、本来、教師の中心的な役割の一つである。知識を教える部分がAIに置き換えられるなら、教師もAIに置き換えられるのだろうか。

 中国でこのほど発表された「『AI+教育』行動計画」では、教師のAIリテラシー基準を策定し、教師が備えるべきAI関連能力を明確化すること、教員養成課程の学生の養成改革を推進し、AIなどの先端技術知識をカリキュラムに組み込み、知識体系を更新することが打ち出された。こうした制度設計の下で、教師がどのように役割を転換するかは、AI時代のすべての教師が向き合わなければならない課題である。

教師は完全に代替されることはない

 2025年、経済協力開発機構(OECD)は、AIの能力を人間の能力と比較する指標に関する報告書「Introducing the OECD AI Capability Indicators」を発表した。杭州師範大学経亨頤教育学院の李陽傑副教授によると、この報告書はAIの能力を複数の側面から評価し、その限界も示している。例えば、社会的状況を読み取る能力には限界があり、新しい環境や予期せぬ変化への対応にも課題が残るという。

 この見方は、深圳大学教育学部特任教授の李樹英氏の意見とも一致する。李氏は、AIには限界があり、教育の根本に触れることは難しいと指摘する。李氏は、「教育者は『人文的文脈における価値判断』『その場の状況を踏まえた判断』『人と人との感情的関係の構築』『教育行為の反省と改善』という4つの中核的価値を持っている。これらは現段階ではAIで代替しにくい」と語る。

 北京師範大学教授であり、未来教育高精尖イノベーションセンターの余勝泉執行主任は、「AIには感情も、人と関わる温かみもない。その一方で、学生の成長は人間関係、表現力・コミュニケーション能力、チーム協働、傾聴・共感などの社会的能力なしには成り立たない。こうした社会的成長、感情や価値観の指導、心理的健康のサポートは、教師が対面で寄り添い、手本を示し、導くことによってしか成し得ない」と述べる。

 社会的能力の育成に加え、知識伝達の面でも、AIは教師を完全には代替できない。対外経済貿易大学北京対外開放研究院の孫宇研究員は補足として、「AIは標準的な答えや大量の情報を効率的に提供できるが、教師は学生の認知レベル、関心の方向、社会的状況に応じて知識を選別・再構成し、批判的に指導することができる」と指摘した上で、「教室でのリアルな対話、啓発的な問いかけ、学生同士の意見のぶつかり合いこそが、独立した思考や判断力の形成により役立つ」と強調する。

 現場の教師が、自身が「挑戦される」「弱体化される」、さらには「代替される」リスクがあるのではないかと不安を抱いていることについて、李陽傑氏は、「『代替』への懸念は、転換期に伴う副産物に過ぎない」と述べる。李氏は、デジタル・インテリジェント技術の深い介入や、人間と機械が共存する状態に各主体が徐々に適応していくにつれ、教師の心構えや行動も変化し、デジタル・インテリジェント技術によって教師の仕事をよりよく支える方法が形成されていくとの見方を示した。「結局のところ、完全な代替は不可能であり、教師は関連分野で自身の強みを発揮することで、『1+1>2』の効果を生み出すだろう」と語る。

役割転換は容易ではない

 李樹英氏は、「教育者にとって、技術がもたらす教育変革は未知のものではない」と指摘する。その理由について、「過去の教育発展の歴史において、教師は農業社会や工業社会における技術発展に適応し、その恩恵を受けながら教育イノベーションを推進してきた。さらに、科学研究と人材育成を通じて、社会と科学技術の進歩を直接的または間接的に促進してきた」と述べた。

 しかし、技術による教育変革が「未知のものではない」からといって、技術変革に伴う役割転換が容易であるわけではない。教師が役割転換を実現するには、なお現実的な困難に向き合わなければならない。李氏は、「主な原因は、かなりの数の教師が自らを知識伝達者として位置付けている点にある」と指摘する。李氏によると、教育には、「言葉と行動で示す」「教科書を基盤として教える」「学生に学び方を教える」「学生の力を引き出す」「教育そのものを生活とする」という5つの段階がある。だが、「多くの教師は『教える、知識を詰め込む、教育上の任務を完了する』という従来のモデルに固定されており、知識を教える部分を切り離すと、自身の職業的な位置付けを見失ってしまう」と語る。

 職業的な位置付けの固定化に加え、現実の職場環境におけるプレッシャーも、教師が変革に適応する上での阻害要因となる。李陽傑氏は、「教師は学校内で多様な役割をこなし、異なる教育空間を行き来しながら、限られた休憩時間の中で仕事をこなしている。この状況下では、慣れた考え方や方法で教育を行うことが、一部の教師にとって最適解とされやすい。一方で、変革に適応し、考え方を切り替えることは『贅沢なこと』となり、不確実性や潜在的リスクと結び付けられ、一定のコストを伴う」と述べた。

 余氏は、「マルチメディア教材などに比べ、AIの利用はより便利で容易だ。しかし、多くの教師は要点を見いだせず、AIを依然として授業用資料やオンライン授業の代替品とみなし、授業補助ツールとしてのみ使用している。そして、AIと『どちらがより上手く講義できるか』を競い合うような焦燥感に陥っている」と指摘する。

 孫氏は、自身の教育実践を踏まえて打開策を示した。「教師は校内研究や学際プロジェクト、人間と機械の協働ワークショップに積極的に参加し、実践を通じて、どの内容を自分が教え、どの内容をAIに任せるかを徐々に明確にすべきだ」と強調した。

 孫氏はさらに、自身が担当するニュース・コミュニケーション専攻の学部必修科目「ジャーナリズム・コミュニケーション研究方法」を例に挙げながら、「授業では、AIが研究方法の定義や手順、古典的な事例の整理、さらにはアンケート案の作成やデータの可視化図表の生成まで効率的に行える。しかし、教師は、その方法が現在の研究課題に適しているかを判断し、アンケート設計に誘導的な質問が含まれていないかを見極め、データ解釈の過程で生じ得るバイアスについて議論するよう学生を導く必要がある。この比較と議論を通じて、学生は研究方法が単なる公式の適用ではなく、一連の責任ある判断であることを本当に理解できる」と語った。その上で、「教室での授業において、標準解答があり、反復性が高く、自動採点可能な作業はAIに任せ、状況理解や価値判断、対人コミュニケーションが必要な部分は教師が担当すべきだ」とまとめた。

AIが模倣できない教育の知恵を探る

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)は2020年、その年の「世界教師デー」のテーマを「教師:危機の中のリーダー、未来の再創造者」と定めた。これは教師の役割を肯定すると同時に、すべての教師により大きな役割を求めるものでもあった。AI時代の到来により、教師が「未来の再創造者」として果たす役割は、ますます明確になっている。

「未来の再創造者」として、教師にはAIリテラシーの向上が求められている。孫氏は、「教師のAIリテラシーには、AIに関する基礎知識、人間と機械の協働能力、批判的に評価する力、振り返りながら学び続ける力などが含まれるべきだ。教師はAIを認識し、理解するだけでなく、教科の目標や学生の特性に応じて人間とAIの役割分担を適切に行い、AIが生成した内容を批判的に評価し、技術が急速に進化する環境の中でも継続的に学び、振り返る習慣を保つ必要がある」と訴える。

 その中でも、批判的に評価する力はとりわけ重要だ。李陽傑氏はさらに、「AIが生成する内容は決して完全無欠ではなく、事実の偏りや価値観のずれといった問題を含んでいる。これらの問題に対応するには、教師が指導的な役割を果たさなければならない。教師は見極める力を備えるだけでなく、学生がAIなどの技術によって生み出されたものを冷静に捉えられるよう導き、正しい価値観を身に付けさせ、独立して考える力を育てなければならない」と指摘した。

 教師のAIリテラシー向上には、科学的な指導と支援も欠かせない。余氏は、「教師のAIリテラシー基準を策定する際の中核的な目的は、教師を導くことであり、硬直的な評価ではない。成果や形式ばかりを重視する評価のあり方を改めてこそ、教師は本当に腰を据えてAIリテラシーを高めることができる」と強調する。

 こうした教師の変化は、突き詰めれば、育てるべき人材像が変わってきたことによるものだ。知識が簡単に手に入る時代になったからこそ、人を育てることの意味は一段と重くなっている。

 李樹英氏は、「教育が単なる技術や応用にとどまらないのは、人間の成長や発達、価値の選択などと密接に関わっているからだ。教育は人と人との交流を基盤として成り立つものであり、教師が学生にもたらす教育は、感情を伴う、生きた生活体験そのものだ。優れた教育者による授業でのやり取りには、常に豊かな教育の知恵が込められており、教室での教師の表情や言葉は、忘れ難い感情の記憶を残すことができる。これらはすべて、教師がAIに代替されにくい重要な理由である。これからの教師は、教育における人文主義の原点に立ち返り、AIでは模倣できない教育の知恵を探し求める必要がある」と述べた。


※本稿は、科技日報「知识获取一键可得,教师该怎么办」(2026年5月21日付)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載した。

 

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