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中国、AI生成物の著作権侵害で責任基準を明確化

Science Portal China編集部 2026年10月09日

 中国最高人民法院は9月7日、「人工知能に関する紛争事件の法的審理に関する意見」を発表した。AIを利用した人格権・個人情報の侵害、製造物責任、自動運転事故、知的財産権・データ権利、訴訟手続など、AIをめぐる幅広い紛争について、人民法院が審理する際の判断基準を示したものである。

 特に注目されるのが、AIが生成したコンテンツによる著作権侵害について、開発者、サービス提供者、利用者それぞれの責任を、AIをどの程度コントロールできたか、どのような注意義務を負っていたかに応じて判断するルールを明確化した点である。

1.AIの急速な普及で、著作権をめぐる紛争が増加

 生成AIがコンテンツ制作や産業活動に急速に普及する一方、AIの学習データや生成物、プラットフォームの管理責任などをめぐる新たな法的問題が生じている。

 中国では2023年に「生成型AIサービス管理暫定弁法」を施行し、学習データの適法な利用や知的財産権の保護などを規定した。2025年9月には、AIが生成・合成したテキスト、画像、動画などについて、生成物であることを示す表示制度を導入するなど、AIの生成・流通段階における管理を強化してきた。

 一方、AIをめぐる具体的な紛争については、これまで個別の裁判事例や既存の法律をもとに判断されるケースが中心だった。AI生成物については、誰が生成に関与し、誰がそのリスクをコントロールできたのかを判断することが難しく、開発者、サービス提供者、利用者の責任をどのように分担するかが課題となっていた。

 今回の「意見」は、こうした新たな紛争に対する司法上の判断基準を体系化したものといえる。最高人民法院は、AI生成コンテンツの著作権侵害について、AIが生成したことだけを理由に関係主体の責任を免除することはできないと明確にしている。責任の判断では、AIサービスの種類や技術・ビジネスモデル、訓練データの出所、各当事者の関与、侵害防止措置、利益の有無などを総合的に考慮する。

2.「AIが作った」だけでは免責されない―関与とコントロール能力で責任を判断

 今回の「意見」の大きな特徴は、AI生成物の著作権侵害について、開発者・サービス提供者・利用者を一律に扱うのではなく、それぞれの関与の程度とコントロール能力に応じて責任を判断する点にある。

AI生成物の著作権侵害における責任判断
主体 主な判断基準・責任
開発者 学習データの出所、モデル設計、侵害防止措置などを考慮し、侵害の発生について過失がある場合は責任を負う可能性がある。
サービス提供者 生成・流通過程における管理・コントロール能力や侵害防止措置を考慮し、必要な措置を講じなかった場合は責任を負う可能性がある。
利用者 既存著作物の認識の有無、プロンプト・素材の入力、生成・利用行為などを考慮し、故意・過失により類似コンテンツを生成・利用した場合は責任を負う可能性がある。

 開発者やサービス提供者については、訓練データの出所、モデルの設計や運用、生成されたコンテンツに対する管理能力、侵害を防止するために必要な措置を講じたかどうかなどが判断材料となる。例えば、特定の著作物と実質的に類似するコンテンツが繰り返し生成される可能性を認識していたにもかかわらず、必要なフィルタリングや生成制限などの措置を講じなかった場合、侵害について責任を負う可能性がある。技術設計によって特定の著作物に類似したコンテンツの生成を促した場合なども、責任判断の対象となる。

 AIの利用者についても、AIが自動的に生成したことだけを理由に責任を免れることはできない。利用者が既存の著作物の存在を知っていた、または知り得たにもかかわらず、特定のプロンプトやパラメータ、素材などを入力し、既存作品と実質的に類似するコンテンツを生成・利用した場合、合理的な利用などの正当な理由がなければ著作権侵害が認められる可能性がある。

 AIを利用して偽のレビューや虚偽広告、模倣コンテンツを生成し、他者の権利を侵害したり、公正な市場競争を阻害したりする行為についても、侵害や不正競争として責任を問うことを明確にしている。

3.AIの「ブラックボックス」を踏まえ、立証責任も分担

 もう一つのポイントが、AIモデルの学習・生成プロセスが外部から把握しにくいことを踏まえた立証ルールである。

 著作権者がAIサービスの開発者・提供者の著作権侵害を主張する場合、まず、問題となるコンテンツが当該AIによって生成されたこと、そして自身の著作物と実質的に類似していることなど、侵害を判断するための基本的な事実を示す必要がある。

 これに対して、開発者側が「著作権を侵害していない」と主張する場合には、訓練データの出所、訓練過程の記録、モデルの動作方式など、自らが保有する情報を提出することが求められる。必要に応じて、科学的・技術的な根拠を示すことも求められる。

 これは、AIモデルの内部構造や学習データについて、著作権者が十分な情報を取得することが難しいという事情を考慮したものだ。最高人民法院も、AI技術の複雑性やシステム運用の不透明性を踏まえ、AI関連事件について証拠審査のルールを継続的に整備する方針を示している。

 今回の「意見」は、AI生成物そのものに著作権が認められるか、また、他者の著作物を許諾なくAIモデルの訓練に利用する行為をどのように法的に評価するかについては、規定していない。最高人民法院は、これらの問題については意見が分かれており、今後の実務を通じてさらに検討していく必要があるとしている。

 今回の「意見」は、AIによるイノベーションを一律に制限するのではなく、AIの開発・提供・利用の各段階で、誰がどの程度リスクをコントロールできたかに応じて責任を判断する枠組みを示した点に特徴がある。AIの普及に伴って新たな紛争が増える中、中国では行政規制だけでなく、司法判断の面からもAIに関するルール整備が進みつつある。

AIコンテンツをめぐる中国の規制・司法基準の主な流れ
注:今回の「意見」は著作権だけでなく、AIによる人格権侵害、個人情報、自動運転、データ権利、訴訟手続など、AIをめぐる幅広い紛争を対象としている。
時期 主な動き 内容
2023年8月 生成AIサービス管理暫定弁法 学習データの適法利用、知的財産権保護などを規定
2023~2025年 AI生成物・プラットフォーム関連の判例蓄積 人間による創作への関与、プラットフォームの管理能力・注意義務などを個別に判断
2025年9月 AI生成・合成コンテンツ表示制度 テキスト・画像・動画などについてAI生成・合成であることを表示
2026年3月 十五次五か年計画(十五五) AI生成物の権利帰属や開発者・事業者・利用者の責任ルール整備を推進
2026年7月 知的財産権「十五五」規画 AI生成物・アルゴリズムに関する知的財産保護ルールを改善
2026年9月 最高人民法院「意見」 AI生成物の著作権侵害に関する責任・立証などの司法基準を具体化
 

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