【26-022】復旦大学チームの原子層半導体「青鳥」、宇宙で実証
馮 妍、王 春(科技日報記者) 2026年03月02日
通信システムは人工衛星にとって極めて重要だが、その平均寿命はわずか数年しかないとされる。宇宙空間には宇宙線という「銃弾の雨」が存在し、通信システムに用いられる半導体電子デバイスの性能を損傷させるためだ。これに対し、復旦大学集積回路・微小ナノ電子革新学院の周鵬教授、馬順利副教授の研究チームが開発した原子層半導体耐放射線RF通信システム「青鳥」は、衛星通信システムの理論上の軌道上寿命を271年へと大幅に延ばし、消費電力を従来の5分の1に低減、重量を従来の約10分の1にまで削減した。さらに、人工衛星の耐用年数を従来の約3年から20~30年に引き上げられる可能性があるという。
このほど「青鳥」システムは衛星プラットフォーム「復旦1号」を通じて宇宙空間に投入され、2次元電子デバイスおよびシステムとして初めて、超長寿命・超低消費電力の実環境下における軌道上検証を実施した。この成果は1月29日付の国際学術誌「ネイチャー」にオンライン掲載された。
宇宙ミッションの競争力を高める
同学院副院長の周氏は、「従来の半導体デバイスが宇宙で正常に動作するには、『人を増やす』か『服を着せる』しかなかった。『人を増やす』とは、半導体部品の数を増やすことだ。例えば1個だった部品を10個にすれば、1個が壊れても残り9個が動作を続けられる。『服を着せる』とは、半導体に金属製の保護ケースを装着し、宇宙線粒子を可能な限り遮蔽する方法だ。しかし、いずれの方法もデバイスそのものの耐放射線性能を高めるものではなく、対症療法にすぎず、根本的な解決にはならない。その上、重量や体積が大幅に増加し、高コストかつ極めて限られた衛星の搭載スペースに大きな負担をもたらすことになる」と説明した。
「青鳥」システムが採用する原子層半導体は、この課題を解決した。原子層半導体とは、半導体原子を2次元平面上に配列し、原子1層または数層分の厚さしかない単層膜を形成するものだ。シリコンなどの従来型3次元バルク半導体とは異なり、宇宙線粒子がこの膜に入射しても、超薄型ガラスを光が通過するように、膜自体への損傷はほとんど生じない。厚さわずか0.68ナノメートルのこの膜は、超軽量であるだけでなく、予備部品や厚い防護ケースを追加する必要もなく、高い省エネ特性も備える。宇宙ミッションは太陽光発電や限られた衛星搭載電池に頼ることが多いが、こうした点はエネルギー面の余裕にもつながる。
地上でどれほど理論検証を重ねても、実際の宇宙空間における複雑な放射線環境を完全に再現することはできない。馬氏は、「『復旦1号』を通じて『青鳥』システムが地上約517キロメートルの低軌道で実運用のテストを受け、実際の宇宙環境における同システムの長期動作の安定性と信頼性を明らかにした。軌道上で9か月間運用した後も、データ伝送のエラー率は1億分の1を下回っている」と語った。
この技術は、宇宙におけるデータ処理効率を大幅に高めることができる。周氏は、「将来は関連技術を宇宙空間に展開し、画像処理などのリアルタイム演算を行うことを検討している。そうなれば、データを地上に伝送する必要がなくなる。『青鳥』システムが実証した原子層半導体の耐放射線性能は、衛星搭載電子システム、さらには衛星全体の運用を制御可能で安定したものとし、深宇宙探査、高軌道衛星、星間通信、宇宙計算といった先端宇宙ミッションに独自の競争力をもたらす」と述べた。
全工程を独自開発
「青鳥」システムは、設計から製造に至るまで、数々の困難を乗り越え、全工程を完全に独自開発で実現した。馬氏は、「この成果には約5年を要した。衛星打ち上げのタイミング待ちだけでも1年ほどかかった。材料選定から部品製作、回路設計、統合調整などに至るまで、1回の実験サイクルだけでも半年を要した」と振り返る。
研究チームの課題克服は、複数の空白分野を同時に埋めるものでもあった。馬氏は、「例えば、原子層半導体材料を用いてデバイスを製造したが、対応する成熟した設計ツールが存在しなかったため、自ら設計ツールを開発した。現在、関連設計が可能なのは中国で私たちだけだ」と胸を張った。
馬氏によると、この成果は将来的な産業化が期待されている。周氏は、「耐放射線という中核成果の産業化に加え、すでに構築した製造チェーンを産業界と連携させることも可能だ。『青鳥』システムのプロセス設計は既存の生産能力と完全に互換性があり、直接量産に移行できるため、量産は難しくなく、今後はコストのさらなる低減が期待できる」と述べた。
宇宙分野にとどまらず、地上の高放射線環境でも原子層半導体技術は大きな可能性を持つ。周氏は、「例えば原子力産業も典型的な高放射線環境だ。人々は人型ロボットに作業を担わせたいと考えており、原子層半導体はその実現を支援することができる」と強調した。
※本稿は、科技日報「原子层半导体"青鸟"首秀太空----卫星通信系统"无视"宇宙辐射」(2026年1月30日付)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。
