低温にも高温にも強い 新型正極材料で有機電池が前進
陳 曦(科技日報記者) 梁紹楠(科技日報通信員) 2026年03月09日
天津大学の許運華教授の研究チームが、華南理工大学の黄飛教授の研究チームなどと共同で、より安全で耐寒・耐熱性に優れた新型の有機正極材料の開発に成功した。従来の有機リチウム電池が抱えていた「容量が小さい」「実用化が困難」といったボトルネックを解消した。関連成果はこのほど、国際学術誌「Nature」に掲載された。
現在、主流のリチウム電池の正極材料の多くは、コバルトやニッケルなどの無機鉱物を使用しており、資源の制約、コスト、安全性、柔軟性の不足といった課題に直面している。これに対し、有機電極材料は原料が豊富で、分子設計の自由度が高いうえ、材料自体が柔軟で、幅広い応用可能性を持つ。だが、高容量と高負荷を両立することが難しいため、製造された電池は容量不足や充電の遅さといった問題を抱えることが多く、実用化の進展を妨げていた。
これに対し研究チームは、新型のn型導電性高分子材料を基盤とし、材料内部における電子とリチウムイオンの「協調輸送」効率を体系的に制御することにより、優れた電子伝導性、リチウムイオンの高速輸送能力、および高いエネルギー貯蔵容量を兼ね備えた有機正極材料を開発。この材料を用いて、エネルギー密度が250Wh/kgを超える有機ソフトパック電池を試作した。この数値は現在広く使用されているリン酸鉄リチウム電池をすでに上回っている。温度適応性にも優れ、−70℃から80℃という極端な温度環境下でも正常に作動するという。
さらに、アンペアアワー(Ah)級ソフトパック電池は釘刺し試験にも合格し、充放電過程でも変形が見られず、安全性が実証された。これは、有機電池の実用化に向けた重要な一歩を示している。
許氏は、「本研究は、電池技術における資源・環境面の制約を打破し、商用電池に匹敵する高エネルギー密度を実現すると同時に、高い安全性と極めて広い温度適応性を両立させた。本成果は将来的な『グリーン電池』開発のための重要な材料基盤を築いており、その柔軟性は、将来のフレキシブルエレクトロニクスやウェアラブルデバイスなどに新たなエネルギー貯蔵ソリューションを提供し得る」と述べた。
※本稿は、科技日報「新型锂电池更加安全抗冻耐热」(2026年2月24日付)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。
