中国、『AI for Scienceイノベーションマップ2026』発表
松田侑奈(JSTアジア・太平洋総合研究センター フェロー) 2026年04月02日
2026年中関村フォーラム(3月25日~29日、北京)で開催された「AI for Science青年フォーラム」(27日)において、中国科学技術情報研究所が複数の機関と共同で作成した『AI for Scienceイノベーションマップ2026』(以下「報告書」)が発表された。
本報告書は、技術形態、学術分野別の応用、エコシステム、国際的な構図といった観点から、図譜(マップ)の可視化形式による分析を行い、AI for Science(人工知能による科学研究の高度化)の現段階における発展の特徴と重要なイノベーション動向を示したものである。
現在、AI for Scienceは、世界の主要な科学技術強国が重点的に取り組む戦略分野となっており、基礎研究における独創的イノベーションの推進および新たな生産力の発展を支える中核的エンジンと位置付けられている。報告書では、AI for Scienceの発展段階の特徴と重要な技術動向が示された。
報告書では、2025年に世界のAI for Scienceの発展が、国家戦略として加速的に展開される新たな段階に入ったとした。中国や米国、EU、英国、日本などはAI for Scienceに関するハイレベルの戦略を相次いで打ち出し、資金支援、研究資源整備、研究組織の構築などの面で政策的取り組みを進めている。特に、先進製造、重要材料、核融合、半導体、工学生物学、量子情報などの先端技術分野に重点を置き、インフラ整備と資源投入を拡大するとともに、AIを中核的推進力とする新たな研究エコシステムの構築や、AI時代の研究に適応した新たなガバナンスの枠組み構築を進めている。
学術論文データの分析によると、AI for Science分野の研究成果は世界的に増加を続けており、過去5年間で論文数は2倍以上になった。AIと各学問分野との融合はさらに深化し、応用範囲も拡大している。報告書では12の代表的分野を分析対象とし、生命科学、物理学、化学、地球科学、材料科学などの分野で研究活動が特に活発であり、航空宇宙、量子技術、材料科学などの分野では年平均30%以上の高い成長率を示していることが明らかになった。また、中国と主要国との間では生命科学、物理学、地球科学などの分野で国際共同研究が深化しており、2024年のAI for Science分野における国際共著論文数は前年比約15%増加した。
報告書では、中国におけるAI for Scienceのイノベーション成果が近年急速に増加しており、論文数および論文引用数の世界シェアがともに大きく上昇していると述べている。地球科学、物理学、材料、エネルギー、航空宇宙など複数の分野において、すでに世界的な優位性が現れているという。地域別では、北京、江蘇、上海、広東が総合的に高い優位性を持つ一方、陝西、湖北、四川などは特定分野において特色ある強みを有している。各地域は、基礎研究の原始的イノベーション、産業エコシステムとの融合、基盤能力の整備など、それぞれの発展段階に応じた政策を策定しており、地域ごとに重点産業分野でのイノベーション成果が現れている。
報告書はまた、AI for Scienceにおける自律型スマート研究の形態進化およびイノベーション・エコシステム構築の進展についても分析し、今後の方向性を展望している。国内外の研究チームは、各研究分野や研究シーンに応じた専門的なAIエージェントやスキルライブラリの開発を進めており、今後、研究者はこれらのAIエージェントを活用して研究プロセスそのものを再設計できるようになると見られている。さらに、プラットフォーム化されたAI for Science向けインフラは、「科学的発見から産業化まで」の全プロセスを一体的につなぎ、新しい研究パラダイムのもとで産業高度化を加速させるとしている。
報告書はさらに、AI for Scienceが単なる研究支援ツールにとどまらず、科学研究の方法そのものを変革し、基礎研究から産業化までのプロセスを大幅に加速させる新たな研究パラダイムになりつつあると指摘している。
各国は現在、AIを活用した科学研究基盤や研究インフラの整備、研究体制の再構築を国家戦略として進めており、AI for Scienceは今後の科学技術力や産業競争力を左右する重要分野として位置付けられている。今後は、分野別の専門AIや研究支援プラットフォームの発展により、研究プロセスの高度化・自動化が進み、科学研究と産業の連携を一層加速させていくことが期待される。
参考資料
- 中国科技網「《AI for Science创新图谱2026》发布」
