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中国の研究チーム、14.5kmの長距離量子もつれを実現

呉長鋒(科技日報記者) 2026年05月21日

 中国科学技術大学の李伝鋒氏、周宗権氏、黄運峰氏の研究チームが「星漢2号」マルチモード量子中継ネットワークを構築し、安徽省合肥市で14.5キロメートルに及ぶ量子エンタングルメント(量子もつれ)を実現した。研究成果は7日付の国際学術誌「Nature Photonics(ネイチャー・フォトニクス)」に掲載された。

 量子中継は、将来の量子インターネット構築に向けた重要技術だ。量子信号は光ファイバー内を伝送する際に急速に減衰するため、科学者は量子中継によって長距離伝送路を複数の短距離リンクに分割し、区間ごとに物質の量子もつれ状態を構築してから接続することで、光ファイバー伝送路における指数関数的な信号減衰を克服している。

 これまで量子中継プロトコルは主に、単一光子干渉方式と二光子干渉方式の2種類に分かれていた。単一光子干渉では、中間ステーションで1個の光子を検出するだけでよいため通信速度は高いものの、伝送路の位相揺らぎに敏感で、忠実度(フィデリティ)に限界があった。一方、二光子干渉では一対の光子を同時に検出する必要があり、忠実度は高いものの速度が低い。速度と忠実度のトレードオフは、量子中継の性能と実用化を制約する根本的な課題となっていた。

 これに対し研究チームは、時間測定に基づくマルチモード量子中継方式を独自に提案した。この方式では、一対の光子が同時に中間ステーションへ到達する必要はなく、「前後して」到達することを許容する。そして両者の到達時間差を高精度で測定することでもつれを予測し、さらにマルチモード量子メモリーを利用して、任意の遅延を伴う量子もつれ光子のオンデマンド読み出しを実現した。これにより、単一光子干渉の高速性と二光子干渉の高忠実度という双方の利点を兼ね備え、高速かつ高忠実度のもつれ分配を可能にするとともに、既存の光ファイバーネットワークインフラとの直接的な互換性も備えた。

 これを基に研究チームは、安徽省合肥市で「星漢2号」マルチモード量子中継ネットワークの構築に成功した。同システムのもつれ忠実度は78.6%に達し、2つの量子メモリー間の直線距離は14.5kmに及ぶ。これは、量子中継プロトコルに長年存在していた速度と忠実度のジレンマを解消しただけでなく、もつれ分配速度を従来の都市圏量子中継と比べて100倍以上に高めた。

 李氏は、「量子もつれは、量子ネットワーク、量子メモリー、量子計算の構築にとって重要な意義を持つ。今回の研究は、これまで公表された中で最長距離の量子もつれを実現したものであり、マルチモード多重化技術は将来の量子ネットワークにおける根本的なテクノロジー・ロードマップとなる可能性がある」と説明した。


※本稿は、科技日報「我科研团队实现14.5公里远距离"物质纠缠"」(2026年5月9日付)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

 

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