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60日間「寝たまま」で最大7万元 中国が宇宙医学実験の被験者募集

付毅飛(科技日報記者) 2026年05月25日

 中国宇宙飛行士科学研究訓練センターはこのほど、「地星3号」ベッドレスト実験の被験者(ボランティア)を公募すると発表した。発表によると、被験者は無作為に対照グループと運動グループに分けられ、グループに応じてベッドレスト期間は約15日または30日となる。実験の進捗状況によっては適宜延長される可能性があるが、最長でも60日を超えない。実験を最後まで完了した被験者には、2万元(1元=約23円)から7万元の実験参加補助金が支給される。

 公募の告知が出されると、幅広いネットユーザーの関心を集めた。「『横になって稼ぐ』チャンスが来た!」「自分こそ選ばれし者のようだ」といった声がある一方で、「スマートフォンが使えないのなら、最後まで続けられない」と気にする声もあった。

 今回の実験は具体的にどのような宇宙医学上の問題を研究するのか。被験者は、日常的にどのような任務や検査を完了する必要があるのか。被験者に選ばれるには、どのような資質が求められるのか。全国宇宙探査技術首席科学教育専門家の龐之浩氏が解説した。

第1の疑問:「地星3号」ベッドレスト実験では何を研究するのか?

 有人宇宙事業は国の科学技術力と総合的な国力を示す重要な象徴と言える。長期軌道滞在はすでに中国の有人宇宙飛行の中核的な発展方向となっている。宇宙空間の微小重力環境は、人体の骨格、筋肉、心血管などに多面的な影響を及ぼす。

 龐氏によると、「地星3号」の主なミッションは、長期有人宇宙飛行のために医学データを提供し、防護計画の検証を行うことであり、具体的には無重力生理効果のシミュレーション、人体への影響に関するデータの取得、防護措置の有効性の検証、深宇宙探査ミッションの支援などが含まれる。実験は以下の4つの宇宙医学上の問題に焦点を当てる。

 第一は心血管機能障害だ。体液が頭部方向へ移動することによって生じる調節異常を探究する。第二は筋萎縮で、不使用性筋萎縮の発生メカニズムを分析する。第三は骨量の減少で、無重力下における骨密度低下の規則性をモニタリングする。第四は無重力防護効果の検証で、運動などの介入措置の有効性を評価し、長期有人宇宙飛行に医学面からの支援を提供する。

 中国ではこれまでに「地星1号」「地星2号」などのベッドレスト実験が実施されてきた。龐氏は、これらと比べ、「地星3号」には3つの革新的な点があると説明する。

 第一に、実験設計がミッションのニーズにより即していることだ。過去の実験は、60日間または90日間の単一の長期サイクルが多く、長期無重力状態における生理的恒常性の観察に重点を置いていた。今回は、15日間と30日間という2つの基本サイクルを設定し、最長で60日間まで延長することで、月面着陸(約30日間)や宇宙ステーションの短期交代などのミッション期間に合わせ、短期的な生理変化が急激に起こる規則性に焦点を当てる。

 第二に、今回の実験では初めてグループ別対照および多体位シミュレーションが導入される点である。過去の実験では厳密な介入対照を設けず、自然な生理変化を観察するにとどまっていた。今回は、対照グループ(ベッドレストのみ)と運動グループ(個別に設定したレジスタンストレーニング/心肺機能トレーニング)を設けることで、運動による防護効果を定量評価し、「現象の観察」から「対策の検証」へのブレイクスルーを実現させる。また、新たに頭高位ベッドレストモードも導入され、月面の低重力および重力への再適応過程をシミュレートすることで、月面着陸ミッションにおける健康支援データを提供する。

 第三に、今回の研究目標が「変化の記録」から「メカニズムの解明」へと進んだ点だ。過去の実験では、無重力が生理面に及ぼす影響について基礎データを収集することに重点を置いていた。今回の実験では、骨格、筋肉、心血管、内分泌など数十項目の指標を同時にモニタリングし、生理変化の深層メカニズムを掘り下げて探究するとともに、防護計画の有効性を的確に評価し、深宇宙探査ミッションにおける宇宙飛行士の健康防護システムの最適化を支援する。

第2の疑問:被験者はどのような任務を行う必要があるのか?

 ネット上では今回の実験を「『寝たまま稼げる』チャンス」と冗談めかして語る声もあるが、実際には被験者の負担は決して軽くはない。龐氏によると、被験者は全期間を通じて頭側を6度下げた傾斜姿勢でベッドに横たわり続けなければならず、日常活動はすべてベッド上で行い、座ったり立ったり、ベッドから下りたりすることは禁止される。

 まず、食事、洗面、排泄、睡眠をすべてベッド上で行わなければならない。運動グループは毎日、計画に従って、臥位でのレジスタンストレーニング(弾性バンドや臥位自転車など)を行う必要がある。また、毎日自分で心拍数や血圧などを測定して記録するほか、ベッドレスト日誌も記さなければならない。

 同時に、研究者は被験者に対して、立位耐性、運動時の心肺機能、筋力、筋肉量、骨密度、脳血流、心電図、血液生化学、骨代謝マーカーなどの生理指標に関する検査を定期的に実施し、実験の全行程を通じてデータを収集する。

 多くの人が関心を寄せているスマートフォンの使用について、龐氏は「使用できないわけではないが、全行程を通じて規定されたベッドレスト姿勢を保ち、起き上がったり、過度に横向きになったりせず、実験の測定に影響を及ぼさないようにし、実験の生活スケジュールや検査の予定を守る必要がある」と説明する。

 龐氏によると、これまでの研究では、30~70日間のベッドレスト期間中、人は活力が低下し、感情が「高-低-高-低」と変動することが明らかになっており、これは宇宙飛行時の感情変化モデルと一致する。このため、被験者に生じうる心理的変動について、今回の実験では高度な注意が払われるだけでなく、重要な研究内容として位置付けられている。研究者は、不安・抑うつ自己評価尺度、気分状態尺度、唾液コルチゾール検査などの方法を用い、毎週、被験者を評価する。

 被験者の心身の健康を確保するため、研究者は24時間体制で心電図、血圧、血中酸素濃度をモニタリングし、定期的に骨密度、筋肉超音波、心肺機能、血液生化学検査を実施する。また、救急チームと緊急対応計画を整備し、防護措置を動的に調整する。さらに、専門の心理医が常駐し、毎週1対1の面談を行い、ストレス軽減や感情調節のトレーニングを実施するほか、読書、スマートフォン、映像・音楽などの娯楽、社会的交流、宇宙飛行士との交流などの活動を提供する。実験ではさらに、被験者のネガティブな感情を速やかに和らげられるよう、危機介入メカニズムも整備されている。

 栄養面のサポートについては、研究チームが被験者向けに「宇宙食」をカスタマイズする。高タンパク、高カルシウム、高ビタミンDなどの食事を科学的比率で提供することで、筋肉や骨格の健康を的確に支え、酸化ストレスによる損傷を軽減する。

第3の疑問:被験者に選ばれるにはどのような資質が必要か?

 今回の実験について、中国宇宙飛行士科学研究訓練センターは手厚い待遇と包括的なサポートを提供しているが、被験者に選ばれるのは決して容易ではない。龐氏によると、選考過程では候補者の科学的素養、心理的レジリエンス、協調性など、多角的な資質が総合的に評価されるという。

 まず求められるのは、優れた心理的資質とストレス耐性である。被験者は15日から60日間にわたり、頭側を6度下げた傾斜姿勢でベッドに横たわり続け、飲食や排泄などもすべてベッド上で行う必要がある。このような極度に制限された生活状態は、焦燥感や不安感などのネガティブな感情を容易に引き起こす。そのため、優れた心理的資質と強い意志力を備え、単調さと孤独に耐えられることが、選考における中核的基準となる。

 次に、学習適応能力および迅速な適応能力も必要である。実験では全く新しい専門領域、未知の操作手順、特殊な規則が関わるため、候補者は新たな知識を迅速に吸収し、新たな技能を習得し、自身の状態を適時調整して実験のペースや特殊な要求に適応しなければならない。

 さらに、責任感やチームへの協力意識も重視される。多くの実験任務は複数人による協力を必要とするため、候補者には全体を見渡す視点や指示に従って協力する姿勢のほか、自ら進んで任務を担い、互いに助け合いながら、個人としての遂行とチーム全体の目標の双方に配慮することが求められる。

 龐氏は、「今回の実験には深い意義と現実的価値がある。科学研究の面では、関連分野の研究空白を埋め、リアルで有効な一次データを取得する。既存の技術的・理論的ボトルネックを打破することで、今後の学術研究および技術進化に重要な支援を提供し、関連分野の研究体系整備と革新的な発展を推進することができる」と述べた。

 実践的な応用の観点について龐氏は、「実験成果を実用化することで、高齢者の健康介入プログラムやリハビリ医療製品の研究開発など、実際の社会的利益に結びつけることが可能になる」と説明した。また、「この実験は、未知を探究し、果敢に突破を目指す精神を示すものであり、真理を追究して実務を重んじ、進んで貢献するという価値志向を伝える。さらに、科学研究の探究に対する人々の関心と熱意を呼び起こし、科学を尊重し、困難な課題に果敢に取り組む良好な雰囲気を醸成するものであり、科学研究上の価値、社会的価値、精神的価値を併せ持つ」との見解を示した。


※本稿は、科技日報「躺着就能赚钱?航天卧床实验没你想得那么简单」(2026年5月9日付)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

 

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