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Moonshot AI、Kimiシリーズで進化させた長文処理とAIエージェント機能

孫明源(科技日報記者) 2026年07月22日

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Moonshot AI(月之暗面)のKimi K2.6モデル。(画像提供:視覚中国)

 中国の月之暗面科技有限公司(Moonshot AI)は6月12日、プログラミングモデル「Kimi K2.7 Code」を公開し、オープンソース化した。パラメータ数は約1兆で、256Kのコンテキストウィンドウ(一度に処理できる情報量の上限)を備える。同モデルは、長いコンテキストを扱うプログラミング場面での指示追従能力や、長期的なプログラミングタスクの性能を重点的に向上させた。また、長期的なタスクで過度に推論を重ねる傾向を大幅に改善し、平均トークン消費量を30%削減した。

 月之暗面が公表したベンチマークテストの結果によると、K2.7 Codeは複数のプログラミングおよびAIエージェント(Agent)のベンチマークテストで、K2.6に比べて10~31.5%の性能向上を示した。

 Kimi K2.7 Codeの公開は、同社にとって汎用人工知能(AGI)分野における新たな技術イテレーションとなった。創業から3年余りで、月之暗面は複数の汎用AIモデルとその各バージョンを発表し、AIのさらなる実用化を進めてきた。同社は現在、北京市のデジタル・インテリジェンス産業を代表する企業の一つであり、中国で注目を集めるAGI企業の一つとなっている。

基盤モデルの最適化に注力

 Kimi K2.7 Codeのベースとなっているのは、2025年に公開された1兆パラメータ規模の基盤モデル「Kimi K2」である。Kimi K2は総パラメータ数が1兆規模に達する一方、エンジニアリングアーキテクチャの最適化により、実際に活性化されるパラメータ数は320億に抑えられている。この設計により、比較的低い演算コストで、より複雑な計算や推論を実行できる。

 一見相反する「低コスト」と「高効率」を、どのように両立させたのか。月之暗面の答えは、「基盤技術から突破口を見いだす」ことだった。

 月之暗面の本社は北京市海淀区知春路にある。生成AI技術が世界的な技術革新を引き起こしていた2023年4月、自然言語処理(NLP)の研究開発に10年間携わってきた楊植麟氏が、チームメンバーとともに同社を設立した。

 同社の人事部門責任者は取材に対し、「現在、研究・エンジニアリングチームは約300人で、その半数以上を『90後』(1990年代生まれ)の社員が占めている」と語った。

 この少数精鋭のチームでは、アルゴリズムやインフラ分野の研究開発者が、自然言語処理、ブラウザアシスタント、強化学習、高性能計算など、複数の学際領域を専門としている。チームメンバーは、国際的に広く使われている主要なディープラーニングフレームワークの開発に携わった経験を持つだけでなく、超大規模計算クラスターの運用や性能最適化でも豊富なエンジニアリング経験を蓄積してきた。

 これらの若手研究者は、「時間をかけて可能性を広げ、蓄積によって突破口を開く」という開発理念を共有している。大規模言語モデル業界の初期に、各社がパラメータ規模を競い、過渡的なモデルの早期公開を急ぐ風潮が広がる中、同社は戦略的な方針を維持し、基盤モデルのアーキテクチャの最適化に力を注いだ。

 こうした基盤技術の革新へのこだわりは、「ロスレス長文処理」技術の開発にも表れている。2023年10月にKimi AIアシスタントを初めて公開した際、「長文処理」は同製品の中核的な特徴となった。

 月之暗面のKimi研究員である杜羽倫氏は、長文処理能力をコンピューターの「メモリ」に例え、「メモリが大きいほど、大規模言語モデルが同時に処理・理解できる情報量が増え、実行できるタスクもより複雑になる」と説明する。当時の技術開発では、チームは業界でよく見られた数多くの「技術的な近道」を採用せず、基礎データを厳密にロスレス圧縮する方針を貫いた。

 市場データは、こうした基盤技術の革新が持つ価値を裏付けた。創業から1年後の2024年には、Kimiのユーザー数が当初の数十万人から数千万人へと増加し、約100倍に拡大した。ユーザー層の急速な拡大は、同社がその後、Kimiオープンプラットフォーム、ブラウザアシスタント、ディープリサーチモデルを展開する基盤となった。

K2シリーズのイテレーションを加速

 基盤技術を重視する姿勢は、月之暗面の原点であると同時に、同社が成長過程で選択してきた方針でもある。Kimiの中核基盤モデルの研究開発を振り返ると、2025年は同社にとって重要な戦略転換期となった。

 2025年、大規模言語モデル業界では激しいユーザー獲得競争が続き、ユーザー数の伸びも鈍化していた。こうした中、楊植麟氏は大規模なマーケティング投資を縮小し、汎用基盤モデルの研究開発に回帰することを決断した。

 この決断は、研究開発チーム内の共感を呼んだ。杜羽倫氏は、「私たちは強化学習を性急に突き詰めるのではなく、第一原理に立ち返り、まず基盤モデルをしっかり作ることを選んだ」と説明する。チームは長期的な開発方針を維持し、過渡的なモデルを急いで発表する誘惑を退け、超大規模AI計算クラスターの運用とアーキテクチャの最適化に重点を置いた。

 2025年7月、この戦略が実を結び、月之暗面は新たな基盤モデルKimi K2を正式に公開し、オープンソース化した。同モデルは混合専門家(Mixture of Experts、MoE)アーキテクチャを採用し、エンジニアリング面でエネルギー効率と性能のバランスを実現した。Kimi K2の公開後、国際的なオープンソースコミュニティから急速に注目を集めた。

 その後、K2シリーズのイテレーションは明らかに加速した。今年1月初めには、コード生成と画像理解に重点を置いたK2.5を公開し、オープンソース化した。4月にはAIエージェントのクラスター機能を拡張したK2.6を発表し、同モデルはオープンソースモデルの中で首位に立った。さらに6月には、長大なコードを扱う開発タスクと、複数のツールを利用するAIエージェント機能を強化したK2.7を発表した。

 楊氏は、リスク管理を徹底しながら技術的な突破を続け、今後10年、20年にわたって競争力のあるモデルを継続的に投入したいとの考えを示した。その上で、「順調に進めば、K3シリーズモデルは今年夏にも公開できる可能性がある」と明らかにした(その後、7月16日にKimi K3を発表)。

 楊氏はかつて、AIの研究開発を「果てしない山を登ること」に例えた。こうした基盤技術の研究開発へのこだわりが、マルチモーダル化や長期的なタスクの実行に必要な中核技術の蓄積につながってきた。

共有型のオープンソースエコシステムを構築

 多くの企業が特定の業界向けにカスタマイズしたソフトウェアを開発し、「スーパー社員」の育成を目指す中、月之暗面は創業当初から、研究開発の重点を汎用的な能力に置いてきた。

 楊植麟氏は、「汎用技術はより複雑で、技術的なボトルネックも多く、より困難な道である」と率直に語る。

 チームが描く将来像では、今後の大規模言語モデルは、分野を超えた自己適応学習能力を備えるべきだとしている。ある特定の場面で新たなスキルを習得した後、そこで蓄積した論理や知識を他の中核能力へ自律的に還元し、幅広い能力を備えた汎用モデルへと発展させる構想だ。

 一部でクローズドな技術路線が採られる中、月之暗面は研究開発の成果をオープンソースとして公開する道を選んだ。研究開発チームによると、その狙いは、開発者や中小企業が高品質なAI機能を利用する際のハードルを下げ、オープンソースエコシステムに参加する個人や組織が技術の恩恵を享受し、アプリケーションレベルのイノベーションを共同で推進できるようにすることにある。

 こうした共有の取り組みの背景には、AGIの長期的な発展を見据えた同社の考えがある。

 楊氏は、モデルの最終的な使い方は、単一のテクノロジー企業だけによって定義されるべきではないと考えている。個人や企業には、それぞれ異なる利用上の好みや活用場面があるためだ。楊氏は、「誰もが自分に合った形でカスタマイズできる機会を持つべきだ」と語る。

 今後、月之暗面は、計算資源を高品質な汎用知能へと転換するための最適解を追求し、「コードを誰もが利用できるツールに変える」というビジョンの実現を目指す。同時に、製品面では「ユーザーとともに知能を創り上げる」という理念を、より重視していく方針だ。

 最先端技術から神秘的なイメージを取り払い、画一的なAIという壁を打ち破り、一人ひとりが自分専用で万能かつ利用しやすい汎用AIアシスタントを持てるようにする。これは、中関村で誕生した同社がAIの最前線に挑戦する原点であり、AIの限界を探求し続ける原動力でもある。


※本稿は、科技日報の許諾を得て、2026年6月23日付の中国語記事「月之暗面:打造人人可用的通用智能助手」を日本語に翻訳し、転載したものである。記事掲載後の同年7月16日、月之暗面はKimi K3を発表した。

 

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