科学技術
トップ  > 中国 コラム&リポート 科学技術 >  セミの鳴き声が今年は大きい? 高温で活発化、聴力への影響も

セミの鳴き声が今年は大きい? 高温で活発化、聴力への影響も

韓 栄(科技日報記者) 2026年09月02日

image

貴州省仁懐市の公園で鳴くセミ。(撮影:陳勇)

 最近、ソーシャルメディアでは「今年はセミの鳴き声がひときわ大きい」と訴える人が多く、中には、セミの鳴き声が長時間続く環境にいると、耳の詰まり感や耳鳴りなどの不調が現れると訴える人もいる。それでは、高周波のセミの鳴き声は本当に聴力を損なうのだろうか。専門家に話を聞いた。

 山西農業大学植物保護学院の助理研究員、彭雲飛氏は、「三伏(夏の最も暑い時期)に聞こえるセミの鳴き声のほとんどは雄のセミによるものだ。雄のセミは口で音を出すのではなく、腹部の発音器官にある膜を振動させて音を出す。発達した発音筋が絶えず収縮と弛緩を繰り返して膜を振動させ、音波を生み出し、さらに腹部にある大きな共鳴腔が音を増幅する」と説明した。

 ネット上で「今年はセミの鳴き声がひときわ大きい」と言われていることについて、彭氏は、高温の天候が重要な要因の一つだと考えている。高温が続くと、まるで雄のセミに興奮剤を打ったような状態になり、気温が高くなるほど、繁殖相手を求めるために、より頻繁かつ大きな声で鳴くようになる。

 彭氏は、「セミは変温動物であり、雄のセミの腹部にある発音筋の酵素活性は、気温によって完全に左右される。周囲の温度が28~35℃に上昇すると、雄のセミの発音筋は最も効率よく収縮し、膜の振動幅も最大になる。高温が続くと、大量の雄のセミが同時に鳴き始め、林の中で一斉に鳴くセミの音の強さは80~90デシベルに達することがあり、これは手持ち式電動ドリルの作業音に近いレベルだ」と説明する。

 温度に加え、個体数も影響を与える要因だ。彭氏によると、セミの数には「多い年」と「少ない年」がある。北方でよく見られるスジアカクマゼミ、ニイニイゼミ、コマゼミなどは、幼虫が地下で3~5年間生活した後、羽化して成虫になる。ただし、毎年同じ数の幼虫が地上に出て羽化するわけではない。数年前からその地域の土壌の温度や湿度が適していて、幼虫の生存率が高かった場合、ある時期に幼虫が一斉に羽化し、「多い年」になることがある。その年には、地域内の雄のセミの密度が明らかに高くなり、人間にはひときわうるさく感じられる。

 同じ数のセミが鳴いていたとしても、都市環境では音がより大きく聞こえることがある。彭氏によると、これは都市に密集する建物や塀、街路樹などが音波を繰り返し反射するためだ。セミの鳴き声が建物の間を行き来して反響し、複数の音が重なることで、より大きく聞こえる。特に午後や夜間は都市の背景騒音が低下するため、それまで周囲の音にかき消されていた高周波のセミの鳴き声が、ひときわ耳障りに響くようになる。

 山西省人民医院耳鼻咽喉科の聴覚士、王偉星氏は、「セミの鳴き声は、決して無害な音ではない。セミの鳴き声の主な周波数は3000~8000ヘルツに集中している。人間の耳の蝸牛(かぎゅう)では、この周波数帯の音を感知する有毛細胞が蝸牛の基底回転部に位置しており、高強度の騒音刺激に対してより敏感で、損傷も受けやすい。高強度のセミの鳴き声に短時間さらされると、有毛細胞の機能が一時的に乱れ、一過性の耳の詰まり感や耳鳴りが生じる可能性がある。騒音環境から離れれば、多くの場合は回復する。しかし、高強度のセミの鳴き声に長期間、繰り返しさらされると、有毛細胞の先端にある不動毛が断裂する可能性がある。人間をはじめとする哺乳類の蝸牛の有毛細胞は再生できないため、このような損傷は通常、元に戻らず、永久的な聴力低下を引き起こす可能性がある」と説明する。

 王氏は、「そのため、セミが集中して生息する場所に長時間とどまらず、強いセミの鳴き声がする場所での滞在時間をできるだけ短くすることが大切だ。こうした場所に長時間とどまる必要がある場合は、まず発泡素材の防音耳栓を選ぶとよい。また、ヘッドホン型の防音イヤーマフを使用することもでき、こちらの防音効果がより高い」と勧める。

 また、自宅にいる場合は、窓を閉めるとよい。夜間にセミの鳴き声に悩まされる場合は、厚手のカーテンを使って吸音を補助する方法もある。そして、ホワイトノイズを適度に流すことで、その鳴き声を和らげることもできる。


※本稿は、科技日報「今年蝉鸣为何格外吵」(2026年8月21日付)を科技日報の許諾を得て日本語訳・転載したものである。

 

上へ戻る