中国、世界初の全固体電池国際標準の開発を主導
Science Portal China編集部 2026年09月10日
中国が提案した電気自動車(EV)用全固体電池の国際標準開発プロジェクトが、国際電気標準会議(IEC)の新規標準開発項目として承認された。中国主導のもと、フランス、韓国、日本などの専門家も共同で標準開発に参加する予定で、中国が全固体電池の技術開発だけでなく、国際標準の策定においても主導権を確保しようとしていることがうかがえる。
IECは、国際標準化機構(ISO)、国際電気通信連合(ITU)と並ぶ主要な国際標準化機関の一つで、電気・電子分野の国際標準を策定・管理している。今回、IECが承認したのは「電気自動車駆動用二次リチウムイオン電池-全固体電池の適用ガイド、試験項目及び条件」に関する新規標準開発プロジェクトである。
全固体電池の「共通のものさし」を国際標準化
今回の標準は、①全固体電池の適用ガイド、②試験項目、③試験条件の3点を中心に構成される予定で、完成車メーカーや電池メーカーが研究開発や製品検証に利用できる共通の試験基準を整備することを目的としている。
現在、全固体電池は企業や研究機関によって試験方法や評価条件が異なっており、同じ条件で性能を直接比較することが難しいという課題がある。新たな国際標準では、全固体電池の特性を踏まえた適用方法や試験条件を共通化し、国や企業によって異なる試験・評価方法を国際的に統一することを目指す。
既存のIEC 62660シリーズでは、EV用リチウムイオン電池の性能、信頼性・誤使用、安全性などに関する試験方法が規定されている。今回の新規標準は、こうした既存の基準を補完する形で、全固体電池特有の特性を反映した適用・試験基準を新たに整備する点に特徴がある。
中国企業、量産化を見据えて実証段階へ
国際標準化の動きと並行して、中国の電池・自動車メーカーでは全固体電池の実用化に向けた取り組みが進んでいる。中国自動車技術研究センターによると、中国の主要企業の多くはすでにパイロット生産ラインの構築を終え、試作品の製造・検証段階に入っている。一部企業では、実際の車両への搭載試験も進められている。
一部の企業では、60Ah(アンペア時)級、約400Wh/kg(ワット時毎キログラム)の全固体電池の試作品が製造されており、パイロット生産ラインも0.2GWh(ギガワット時)規模に達している。中国の業界では、2027年前後から車両への実証を進め、2030年以降に大規模な量産・商用化を目指すとの見方が示されている。
主要企業もそれぞれ量産化に向けた計画を進めている。CATLは全固体電池の研究開発と産業化を進め、2027年の小規模生産を見込む。BYDは硫化物系全固体電池を開発しており、2027年の小規模生産・車両実証、2030年前後の大規模導入を目標としている。広州汽車は60Ah以上の車載用全固体電池のパイロット生産ラインを稼働させ、2026年には自社EVへの搭載による車両検証を進める計画である。また、EVE Energyも2025年9月に成都の全固体電池生産拠点で試作電池をラインオフし、2026年末までに100MWh(メガワット時)規模の生産能力確保を目指している。
もっとも、全固体電池の本格的な商用化には、材料や電極・電解質の界面安定性、製造プロセス、コストなど、なお解決すべき課題が残されている。
技術開発から国際標準化へ
今回の取り組みで注目されるのは、中国が全固体電池の技術開発だけでなく、その評価方法や試験条件の国際標準化にも関与しようとしている点である。新たな国際標準が最終的に策定されれば、国や企業によって異なる試験条件が統一され、製品間の性能比較や技術検証の一貫性が高まることが期待される。
中国の電池業界では、自国内で蓄積してきた試験方法や技術的な知見が国際標準に反映されれば、海外での認証・検証に伴う重複作業を減らせるほか、中国企業の海外展開にもつながるとの見方がある。
全固体電池は、次世代EVの主要技術の一つとして、日本、韓国、欧州などでも研究開発競争が進んでいる。今回の標準開発では、フランス、韓国、日本などの専門家も参加する予定であり、中国だけでなく主要な電池技術国が共通のルールづくりに関与することになる。
なお、今回承認されたのは国際標準そのものではなく、「新規標準開発プロジェクト」が承認された段階である。最終的な国際標準の策定には、通常2~3年を要し、それ以上かかる場合もある。
技術開発、量産化、そして国際標準化――。中国は全固体電池をめぐり、製品そのものの競争だけでなく、技術を評価する「ルール」の形成にも早い段階から関与しようとしている。今後、国際標準の策定プロセスにおいて中国の技術的知見がどの程度反映されるかは、全固体電池をめぐる国際的な競争を左右する一つの要素となりそうだ。
参考資料
- 中国科技网「从"跟跑"到"领跑" 我国牵头制定固态电池首个国际标准」
- 浙江省经济信息中⼼ 「半固态电池"元年"来了?」
