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ディープテックが変える産業構造 中国の専門家らが展望

付麗麗(科技日報記者) 2026年09月29日

 中国の科学技術交流イベント「第13回喜望峰サイエンスサロン」が9月2日に開催された。席上、2025年度国家最高科学技術賞を受賞した中国工程院院士(アカデミー会員)の陳立泉氏は、「長年、新エネルギー材料の分野に携わってきたが、エネルギー問題は単なる産業問題ではなく、国家安全保障に関わる問題であり、さらには文明が持続的に発展できるかどうかを左右する基盤的な問題でもあることを深く理解している」と述べた。

 陳氏は、「ディープテックは基礎研究に根差しており、これまでの主要な科学技術革命は、いずれも基礎研究のブレイクスルーにまでさかのぼることができる」と述べた。また、リチウム電池材料の特許におけるブレイクスルーを例に挙げ、大国間競争の本質は独創的・破壊的イノベーションをめぐる競争にあると説明した。

 陳氏は、よりクリーンで安定し、効率が高く、大規模に利用できる新型エネルギーシステムをいち早く構築した国ほど、将来の産業競争で主導権を握る可能性が高いとの見方を示した。科学から技術、さらに製品、市場へと転換していく道のりについては、「想像よりはるかに困難だ」と述べた。

 陳氏は、「国に必要とされることに取り組んでいく」と述べ、より多くの若者が基礎研究やエンジニアリング・イノベーション、産業の現場に携わり、研究成果を製品や産業へとつなげ、社会や国の発展に生かしてほしいとの期待を示した。

 2010年のノーベル物理学賞受賞者であるコンスタンチン・ノボセロフ氏は、「非平衡状態の知能システム」と題した基調講演で、数世紀にわたる物理学と材料科学の発展を振り返った。ノボセロフ氏によると、物理学における認識の発展は、可逆的なものから不可逆的なものへ、そして最終的には複雑系へと向かっている。こうした流れは科学史を振り返るだけでなく、ディープテックのブレイクスルーが生まれる背景にある論理も示しており、複雑系こそがエントロピー増大に抗い、真のイノベーションを育む土壌だという。

 これは、中科創星の創業パートナーである米磊氏が著書「ディープテックの波」で提起した「複雑性によってエントロピー増大に抗う」という命題とも一致する。米氏は同イベントで基調講演を行い、ディープテックのトレンドや投資機会、文明の発展についての考えを体系的に説明した。米氏は、「複雑性によってエントロピー増大に抗う」ことは、宇宙、生命、文明を貫く基本的な論理だと考えている。さらに、宇宙が全体としてエントロピー増大の方向に向かう一方、生命や文明は、より複雑な構造を形成することで存続してきたとの見方を示した。

 この基本的な論理に基づき、米氏は「文明の第一原理」を提唱し、文明という複雑適応系を「知識システム」「経済システム」「社会システム」の3つのサブシステムに分けた。この3者のうち、知識システムが源となり、知識のイノベーションが経済成長を促し、それによって社会の進歩を推進するという。

 また米氏は、ディープテック文明とは、「指数関数的に進化する知能、ほぼ無限のエネルギー、精密な物質改変、広大な宇宙空間の開拓、自律的な生命の最適化」を特徴とする、次の段階の人類文明の形態だと述べた。

 米氏は、「ディープテック文明の時代には、新たな革命的技術のブレイクスルーが、物質、エネルギー、生命、情報、宇宙空間という5つの方向に沿って進んでいく。情報の『果て』は知能と量子、エネルギーの『果て』は制御核融合、物質の『果て』は原子製造、宇宙空間の『果て』は恒星間移民、生命の『果て』は人間と機械の共生だ」と話した。

 中国科学院物理研究所の研究員で、中国物理学会科学普及委員会主任を務める魏紅祥氏が、サロンの対話セッションの司会を務めた。出席した専門家は、現在、人類社会は新たな科学技術革命の入り口に立っているとした上で、ディープテックのブレイクスルーは産業構造を再構築するだけでなく、文明の発展が向かう方向にも深い影響を及ぼすとの見解を示した。


※本稿は、科技日報「硬科技突破将重塑产业格局」(2026年9月4日付)を科技日報の許諾を得て日本語訳・転載したものである。

 

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