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『中国の日本研究』 書評

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  • 編著者:国立研究開発法人 科学技術振興機構 中国総合研究交流センター
  • ISBN:978-4-88890-508-4
  • 発行日:2016 Printed in Japan
  • 商品の寸法:29.7 x 21.0 x 1.2 cm
  • 在庫:在庫切れ(下記PDFをご利用ください)

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書籍紹介(『中国の日本研究』はじめに より転載)

毛里 和子(早稲田大学名誉教授)

 2005年の反日デモ、2010年の尖閣諸島海域での漁船衝突事件、そして2012年の日本の尖閣諸島「国有化」とそれに反発する中国。21世紀の両国関係は、とても残念ですが「波高し」でスタートしました。

 芳しくない学術交流をせめて回復し、研究者の信頼関係を取り戻したいと切に考えていたところ、科学技術振興機構の中国総合研究交流センターから「中国の日本研究」を大きなテーマにしたプログラムを考えてほしい、という要請がありました。日本の近代史研究の第一人者で、中国の研究者と地味な研究交流に熱心な村田雄二郎教授 (東京大学)などとチームを組むことになりました。若手研究者にも集まっていただきました。1年前の記録をめくって見ましたら、なんと2015年のエイプリルフールに第一回会合を開いています。

  肝心なお相手である中国の研究者について、日本研究の大きな拠点の責任者でいま第一線で活躍している日本研究者に協力をお願いするという考えでまとまり、古くからの友人である楊棟梁先生(南開大学)、歩平先生(社会科学院近代史研究所――この8月14日に逝去されました。とても残念なことです)などにお願いしました。

 本プログラムは、独得の発展を遂げてきた中国における日本研究が、近年活気を失っているという危機感、他方、アニメなど柔らかい日本文化への高い関心など、日本研究を見直す必要があるかもしれない、また日本と中国の学術ネットワークを再構築する必要があるかもしれない、と考えました。要は、日本の研究者が微力ながら中国における日本研究をサポートしたいと考えてのプログラムです。

 中国の日本研究になんとか協力したい、サポートしたいと考えた直接のきっかけは、ある在日の中国研究者の、中国および世界の日本研究が「日本素通り」になってしまっているのではないか,という危機感を知ったからです。彼女は次のように言います。

 「残念ながら、世界の日本研究が日本国内の最新研究成果を十分確認することなく、蓄積されていく傾向も徐々に強まっている。それは世界の日本認識と日本の自己認識との間のギャップをさらに拡大させる原因にもなっている」。【王雪萍「中国における近現代日中関係研究の発展と限界」『相互探求としての国際日本学研究』法政大学国際日本学研究所、2013年】

 日本の研究成果、日本語の文献が素通りされる傾向は世界的にある、と彼女は言うのです。こうした「ジャパン・パッシング」の背後には、CNKIやオンライン・ジャーナルなどで中国語・英語の文献がとても容易に利用できること、一方、日本語文献の電子発信や英語発信がとても遅れていること、日本の経済・政治地位が落ちていることなどがあるのでしょう。

 今回のシンポジウムはそうした状況を少しでも変えるために企画されました。日本側の方々の尽力、なにより、中国からきた第一流の日本研究者によるすばらしい発言、そしてJST中国総合研究交流センターのお力でとても内容豊かな会となりました。ぜひご一読下さい。

 

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