中国広東省東莞市の虎門服装設計城では、フリーランスのデザイナー、周曼氏が春の新作を準備していた。マウスで黒いトレンチコートのデザイン画を選択し、「AI(人工知能)でデザイン変更」と入力すると、数秒後には数十種類のトレンチコートデザインが画面に表示された。人民日報が伝えた。
周氏は、「8年前、業界に入ったばかりの頃は、デザイン変更をするにはまず画像ソフトで切り抜きや色調整を行い、パタンナーと何度もやり取りしなければならず、半日はかかっていた。当時は毎日、1000枚以上の画像を閲覧し、ダウンロードして分類し、使えそうなデザインを選んでいた。トレンチコート1着について、インスピレーション収集、デザイン画作成、修正、試作を行うのに少なくとも7日かかっていたが、今では1日しかかからない」と語った。
時間の節約だけではない。周氏がシステムの操作を続けながら、「シンプルなトレンチコートにパッチワーク素材を組み合わせる」と指示を出すと、瞬時に10通りのパターン案が生成され、「シリーズ配色」機能ではトレンドに合った6種類のカラーコーディネートが表示される。周氏は「以前は工法のサンプルを作るのに型を起こしてサンプルを作る必要があり、2000~3000元(1元=約23円)かけて数日間待たなければならなかったが、今は低コストでリアルな再現が可能だ。素材、配色、工法、完成品の着用イメージを確認してから生産できるため、コストは大幅に削減されている」と述べた。
同設計城でデザイン新作の迅速な投入を実現したAIシステムは、深圳市蝶訊網科技有限公司(蝶訊網)が開発したものだ。同社の竜波総経理は、「1995年、当社はファッション情報を整理して仕立屋や縫製工場に販売することから始まり、徐々にウェブサイトを構築してトレンド予測を行ってきた。そして2023年に大規模言語モデルを開発した。我々には30年にわたるデータの蓄積と業界の知見があり、デザイナーと市場のニーズを理解している。例えば『新しい中国スタイル』については、海外の大規模言語モデルでは中国古代の服飾と解釈されることがあるが、当社はデータ学習と消費分析を通じて、チャイナボタンや刺繍といった中国的要素を正確に抽出し、1時間以内で新しいスタイルモデルを微調整して導入できる」と説明した。
周氏にとってのAIは、膨大なリソースから案を一次選別し、トレンドを分析する手助けに過ぎない。新しい服に魂を吹き込むのはデザイナー自身であり、次は彼女自身が創造力を最適化し、細部を磨く番となる。
同設計城の蒋俊総経理は、「AIはデザイナーに取って代わるのではなく、より良く仕事をする手助けだ。当設計城の65%のアパレルブランドが蝶訊網のAIシステムを導入しており、アイデアから商品化への成功率は少なくとも50%向上し、試行錯誤コストも大幅に削減された。以前は20製品を発売する際、サンプル作成に100着必要だったが、AIによるシミュレーションと最適化後は30~40着で済み、全体の効率が2~3倍向上した。フリーランスのデザイナーもAIと共有リソースを活用することでアイデアに集中でき、総合的なデザインコストは少なくとも80%削減できる」と語った。
アパレル業界では「小ロット・短納期」が進み、デジタル化がアパレル産業チェーンの各工程に深く浸透している。例えば蝶訊網では、ワンクリックでサプライヤーとのマッチングが可能となっており、デザイナーが要望を出すと、サプライヤーがオンライン入札でき、最短で当日中にサンプルを受け取ることができるという。