上海交通大学の人工知能学院と医学院附属新華医院の共同チームがこのほど、エージェント型の希少疾患エビデンス推論診断システム「DeepRare」を発表した。希少疾患における「確定診断が難しく、見逃し率が高い」課題に対し、ソリューションを提供する。研究成果は国際学術誌「ネイチャー」にオンライン掲載された。科技日報が伝えた。
DeepRareは、上海交通大学の張婭教授、謝偉迪副教授、新華医院の孫錕教授、余永国教授が中心となって開発。推論機能と役割別モジュールを分担させる「中枢-分身」型アーキテクチャを採用し、単一モデル中心の従来型医療AIとは異なる構成とした。膨大な医学文献と臨床症例を参照できるように統合し、診断時に根拠情報を参照できる知識基盤を整備した。診断では、既知パターンへの当てはめで結論を返すのではなく、「仮説を立てる→検証する→必要に応じて見直す」という手順で段階的に推論し、診断の手掛かりを絞り込む。推論の過程と根拠を示す説明可能な推論(ホワイトボックス)を採り、各診断結論には参照した文献・症例などの根拠を追跡できる形で付し、判断の理由を確認できるようにした。
臨床データによれば、DeepRareは表現型情報のみの診断における第1候補の正解率が57.18%に達し、国際的な最良モデルを23.79ポイント上回った。これにより「遺伝子検査をしなければ確定診断が難しい」という課題の改善につながるとしている。診断のリコール率でも、臨床経験10年の希少疾患専門医を上回った。遺伝子シーケンスデータを導入すると、複雑症例における総合的な第1候補診断正解率は70.61%を超え、一般的に使用されるツールを大きく上回った。システムが生成する推論レポートは医師満足度95.40%を獲得し、診断の根拠提示に役立ったとしている。
DeepRareのオンライン診断プラットフォームは2025年7月26日に公開され、半年で世界の専門ユーザー1000人超の登録を集め、600以上の医療・研究機関に広がった。現在、同システムは新華医院で導入と内部テストを完了しており、「デジタル品質管理員」として院内の希少疾患診療の品質管理プロセスに組み込まれている。チームは国内の遺伝子検査機関とも連携し、臨床解釈レポートの自動生成を進め、遺伝子検査結果の解釈にかかるコストと参入障壁の低減を図っている。
現在、共同チームは「万人臨床検証計画」を開始しており、国際的な多施設共同研究を基盤に、数万例の難治性希少疾患症例で臨床検証を進め、世界規模のインテリジェント診断ネットワークの構築を目指している。