中国各地で、AI(人工知能)を活用した個人起業を支援する拠点の整備が進んでいる。AIツールを活用し、1人でも製品開発やマーケティングなどを行う「一人会社(One Person Company、OPC)」の育成を目的としたコミュニティだ。中国新聞網が伝えた。
山東省済南市のデジタルスマートエコシステムOPCコミュニティには最近、スタートアップ企業が次々と入居している。こうした企業の多くは1人で設立され、「1人と1台のパソコンだけ」で製品開発や市場開拓などのビジネスプロセスを完結させる。
済南市は今年2月、デジタルスマートエコシステムOPCコミュニティを始動させ、2万平方メートルを超えるインキュベーションスペースを提供した。データによると、同コミュニティには開始から1カ月で企業51社が入居。AIコンテンツ開発やAIエージェントサービスなどの分野が中心だ。同市は計算能力利用費の最大60%補助などの支援策を打ち出し、年内に企業1000社以上を育成する計画としている。
2025年8月、国務院は「AI+」行動の実施に関する意見を発表し、創業時からAIを組み込んだ「スマートネイティブ企業」の概念を提起した。OPCはその実践形態の1つとされ、低コスト、小規模、迅速なイテレーション開発が特徴とされる。
現在、中国各地にはOPC専用コミュニティが数十カ所設けられ、北京、上海、深圳、蘇州、南京、杭州など10数都市に広がっている。北京経済技術開発区ではOPCコミュニティの整備を進めており、計算能力、データ、AIモデルなどの利用支援として毎年最大3億元(1元=約23円)を投入している。四川省成都市では「AI+デジタル文化クリエイティブ」に特化したOPC専用コミュニティが設立された。江蘇省の蘇州工業園区は、総面積100万平方メートル以上となるOPCベンチマークコミュニティを10カ所以上整備する計画を打ち出した。深圳市もOPC起業エコシステム構築に向けた行動計画を発表し、面積1万平方メートル以上のOPCコミュニティを10カ所以上整備し、成長性の高いAIスタートアップ企業1000社以上を育成する方針を示している。
山東財経大学中国経済研究院の董彦嶺教授は、「OPCは専門性と信頼関係を基盤とするアセットライト(資産軽量型)モデルで、特にデザインや研修などの分野に適している。その背景にはAI技術によって起業のハードルが下がったことがある。OPCは小規模だが、産業チェーンの細分化された領域に入り込み、大企業のイノベーションを補完する役割を果たす可能性がある」と分析する。
董氏はまた、「OPCコミュニティが中国各地に広がっていることは、地方政府の企業誘致政策が大型プロジェクトの誘致競争から、AI時代の個人主導のイノベーションエコシステム育成へと転換していることを示している。OPCコミュニティは地域空間を基盤に公共サービスを提供するだけでなく、集積効果によって企業間協力を促進し、資源の効率的な統合を実現できる」と指摘した。