半導体製造で外国企業の進出なるか? インドの最新半導体事情

2021年6月2日 JSTシンガポール事務所

日本とインドは「日印デジタル・パートナーシップ」で協力しており、科学技術振興機構(JST)はインド科学技術庁(DST)と共同で半導体に関係する日印共同研究も支援している。インドの半導体の概要を以下のとおり、報告する。

要点:インドの半導体需要は大きいが、インフラの欠如等の理由により国内には大きな製造拠点はなく、輸入に依存している。しかし多くの多国籍半導体企業がインドに半導体の研究開発と設計拠点として研究開発センターを設置しており、政府の誘致策によりインドに製造拠点を設立する外国企業の進出が期待されている。

1.概況

  1. (1) インドにおいて半導体は電気通信、情報技術、産業機械とその自動化、医療用電子機器、自動車、エンジニアリング、太陽光発電を含む電力、防衛と航空宇宙、家庭用電化製品、電化製品等多くの産業で必要とされており、インドの半導体消費量は2013年の100億ドルから2020年までに525億ドルに増加したと推定されている。
  2. (2) しかし、インド国内には商用の大きな半導体製造拠点がなく、米国、日本、台湾、中国等からの輸入に依存している。
  3. (3) 国内に製造拠点が乏しい原因は、煩雑な行政手続き、資金不足、半導体材料の調達の問題、土地取得の問題、中断のない脱イオン水と電力供給の問題、窒素やアルゴンなどのガスの供給の問題、熟練した労働力の欠如、電子工学と研究開発における経験豊富な国内人材の流出等である。
  4. (4) これらの理由によりインドでは半導体の研究開発と設計に焦点が当てられ、大学や研究所はチップの設計、テスト、組み込みシステム、MEMS等の研究と一部製造を行っている。
  5. (5) 他方、世界の半導体企業の多くがインドに研究開発拠点を持ち、以前は外国の本社のサポート業務が中心だったが、現在ではコアのチップセットそのものをインドで設計している。多くの多国籍企業がインドに研究開発センターを設置している。研究開発センターの場所はベンガルールが多い。

2.インドの大学や政府機関の半導体研究開発状況

  1. (1) インドの電子情報技術省(MeitY)によると、超大規模集積回路(VLSI)とチップ設計の研究開発能力の高い大学はベンガルールのインド理科大学院(IISc)とムンバイのインド工科大学ボンベイ校(IITB)のナノエレクトロニクスセンターである。
  2. (2) 政府機関ではインド宇宙研究機関(ISLO)傘下の半導体研究所(SCL)がチャンディガールで2006年から様々なアプリケーション向けのCMOSおよびMEMSデバイスの設計、開発、製造、組み立てを行っている。また、防衛省傘下の半導体技術応用研究センター(STARC)がベンガルールで1996年からCMOSやMEMSデバイスを製造している。同じく防衛省傘下のガリウム砒素実現技術センター(GAETEC)がハイデラバードで1996年から設計、ウェーハ製造、組み立て、テストを行っている。

3.インドの半導体誘致政策

  1. (1) インド政府は電子部門では100%の外国直接投資を許可しており、2000年4月から2020年12月の間に30億ドルの半導体産業に関する外国直接投資を受け入れた。
  2. (2) 2020年3月に、インド政府は電子機器と医療機器の製造に関しては、生産連動型優遇制度(PLI)、電子部品・半導体製造促進制度(SPECS)、修正電子機器製造クラスター制度の3種類のインセンティブ・スキームを用意した。これらは「国家電子産業政策(NPE2019)」で挙げられたインセンティブ・スキーム(5年間の補助金を支給)であり、インドが電子機器の設計製造分野のグローバル・ハブとなることを目的としている。
  3. (3) 2020年12月には、インド政府は国内に半導体製造施設を設立するために外国企業からの提案を募集した。関心表明は日本語、中国語、韓国語、ヘブライ語で提出可能であり、締め切りは2021年3月31日から4月30日まで延長された。
  4. (4) 2021年3月には米国に本社を置くSilicon power社が誘致策に応じてインドのハロル(グジャラート州)に子会社の半導体製造ユニットを設立する動きが報道された。
  5. (5) 2021年4月にはインドに進出する半導体企業への10億ドルの現金の提供が報じられた。

4.インド電子半導体協会(IESA)の台湾事務所

  1. (1) 2017年にインド電子半導体協会(IESA)は台湾に事務所を設立した。台湾の大手電子企業も相次いで進出しているインドは半導体製造業の導入のために台湾企業の誘致を積極化している。台湾業界にとってもスマートフォン用チップをはじめインドの巨大市場は魅力である。インドは川上分野の研究開発で地位を得たものの、半導体製造業に参入できていないため、台湾企業の投資を誘致し、サプライチェーン構築に協力してもらうことを希望している。また、事務所設立を契機にインドの人材が台湾半導体企業との提携案件に直接参加し、企業オペレーションを学ぶことで半導体サプライチェーンのインド移転に有益となる。なお、インドに拠点を置く台湾企業は 約110 社である。