クリーンエネルギーや新型コロナで欧州・BRICSと科技協力推進 インド

2021年10月26日 JSTシンガポール事務所

インドの科学技術省は、DBT(バイオテクノロジー庁)、DST(科学技術庁)、CSIR(科学産業研究委員会)、SERB(国立科学工学研究委員会)を通じて、グローバルな発展に重要な役割を果たしている。エネルギー、水、健康、天文学などの重要な分野に関連するインド固有の問題に取り組むことに焦点を当てた研究開発を支援している。これらのミッションは官民パートナーシップの下で、省のすべての部門にイノベーションをサポートする専用のプログラム部門がある。そしてインド政府は、クリーンエネルギー等のグローバルな課題に取り組むために多くの多国間イニシアチブを推進しており、世界をより良く、より科学的な場所にするためのグローバルな科学技術パートナーシップの主要な推進者である。

Mission Innovation(MI)はEU(欧州連合)とのグローバルイニシアチブであり、クリーンエネルギーを手頃な価格で全ての人が利用できるようにするための研究開発と実証への投資を促進している。DBTがクリーンエネルギーの研究開発における国の取り組みを調整し、DSTや他の省庁と緊密に協力してさまざまな活動を行っている。

国際インキュベーションセンター設立

フェーズ1では、DBT、DST、CSIRを通じて8つのイノベーション課題に参加し、3つの課題(スマートグリッド、電力へのオフグリッドアクセス、持続可能なバイオ燃料)を共同で主導することにより、グローバルレベルで重要な役割を果たした。また、社会の利益のために最も影響力のあるクリーンエネルギーソリューションを提供するための新興企業を支援するためにクリーンエネルギー国際インキュベーションセンターを設立した。過去5年間のこれらの協力の成功に基づいて、インドは他のメンバー国とともに知識の展開が可能なプラットフォームを通じて、フェーズ2の取り組みをさらに5年間継続することに合意した。

インド政府は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の課題に対処するために主に基礎研究・診断・治療・ワクチン開発に焦点を当て、産業界や新興企業と緊密に協力して強力な国内および国際的な研究プログラムを実施している。パンデミックはインドが世界の利益のために先住民のバイオ技術を活用するための機会を提供した。パンデミックを効果的に制御するための安全で効果的なワクチンの可能性を考慮して、インド政府は国内の取り組みと国際的なパートナーシップの両方を通じてワクチンの開発と製造活動を支援している。

現在、インドではCOVID-19の新たなワクチン候補が緊急使用許可の承認を受けており、さらに別のワクチン候補が開発の臨床段階にある。加えて産業界および学界による他の多くのワクチン候補が開発段階にある。インドは臨床開発のさまざまな段階でさまざまなプラットフォームのワクチン候補の有望なパイプを持っている世界でも数少ない国の1つである。

Partnerships for Advancing Clinical Trials(PACT)イニシアチブの下で、DBTは近隣諸国での臨床試験能力を強化するために外務省と緊密に協力している。また、DSTは、パンデミック時の学生・医療従事者・高齢者のメンタルヘルスに関するヨガと瞑想への取り組みも行っている。CSIRはワクチンの開発のために、プロセスの標準化・スケールアップ・生産ラインの確立に必要な開発プロジェクトを支援している。また、複数のプラットフォームによる二国間および多国間の協力を呼びかけている。

COVID-19の疫学研究

BRICS(新興5カ国)との協力も進んでいる。インドの科学者は、中国・ロシア・ブラジルの科学者と共同で、COVID-19パンデミックの疫学研究と数学的モデリングの研究を行っている。これはウイルスの分布だけでなく、遺伝子の突然変異や組換えを追跡するのに役立ち、また、その広がりについて将来の予測を行うのに役立つ。 ウイルスの遺伝子変異と組換えの追跡には全ゲノムの配列が必要だが、疫学研究はその分布を評価するのに役立ち、将来の広がりを評価するには数学的モデリングが必要である。

このことを念頭に置いて、さまざまなバックグラウンドを持つ科学者やエンジニアの専門知識を取り入れて研究計画が立案された。インドのネルー工科大学ハイデラバード科学技術研究所環境センター、中国の中国科学院、ロシアの連邦基礎医学研究センター、ブラジルの呼吸器測定研究所などの研究者がコンソーシアムを作って多国間のさまざまな研究開発を実施する。

ウイルスの拡散ネットワーク調査

インド科学技術省の支援を受けたこの研究の下で、ブラジルと排水の疫学監視のためのメタゲノム分析を通じて、環境サンプル中のウイルスの分布を評価する。また、中国とロシアの科学者は呼吸器疾患の症状のある患者からの生体物質中のウイルスのリアルタイムなPCR検査を実行してゲノムの変動性・比較ゲノミクス・系統発生分析を調査する。

インド、中国、ロシア、ブラジルのゲノム・メタゲノム・疫学のデータを統合して、突然変異の分析・集団遺伝学・系統発生関係・組換え分析・リスク評価の数学的モデルを開発し、ウイルスの拡散ネットワークとダイナミクスを明らかにする。これはウイルスの拡散経路とダイナミクスを追跡するのに役立つ。さまざまなグループによって開発されたデータベースは、さまざまな地域でのウイルスの分布と生存を比較し、関連する早期警告システムの監視を確立する。インド・中国・ロシア・ブラジルの共同研究により4つの異なる国のデータを共有および分析し、ウイルスの拡散経路と感染動態を理解するための共通のプラットフォームを提供する。

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