【AsianScientist】 耐塩性細菌がスンダルバンスの農家を高塩分濃度から守るかもしれない

この地域の土壌の高い塩分濃度に対処するために、新たな研究は在来細菌を生物肥料として活用する重要な一歩となる。(2025年12月5日)

スンダルバンスはインドとバングラデシュにまたがるマングローブ林地帯である。ここは、気候変動への脆弱性、頻発するサイクロン、そして多くの生命と生計手段が失われていることで知られている。この地域のマングローブは、強いサイクロンなどといった気候災害に対する自然の盾として機能し、スンダルバンスだけでなく海岸から離れた人々の居住地も守っているため、公開討論の中でも、際立った話題となっている。この地域では農業が主要な生計手段となっている。しかし、スンダルバンスの土壌は塩分濃度が高く、農業には適していない。新たな研究により、研究者たちは耐塩性細菌を天然由来の肥料として利用する道を一歩前進させた。これは高塩分濃度の問題に対処する一助となろう。

PLOS One誌に発表された本研究論文を執筆したのはコルカタに所在するインド統計研究所の研究チームである。チームはインドのスンダルバンスにおける耐塩性細菌の分布を調査した。本研究は、この地域で栽培される作物の気候変動耐性を高め、農業に対する新たな考え方を生みだすかもしれない。

今年初め、この研究チームの一部のメンバーは、耐塩性細菌の新種をいくつか発見した。彼らは、これらの細菌を生物肥料、すなわち「バイオ肥料」として利用すれば、塩分濃度の高い土壌であっても農業を営むことができると自信を持って述べた。これらの細菌はスンダルバンス地方で見つかった。

論文の責任著者であり、コルカタに所在するインド統計研究所生物科学部門農業生態学研究ユニットのパビトラ・バニック (Pabitra Banik) 教授は「私たちはバイオ肥料の開発に取り組んでいます」と語る。研究チームは、コルカタ近郊のナレンドラプルにあるラーマクリシュナ・ミッションなど、様々な農業研究パートナーと共に、これらのバイオ肥料の試験を行っている。

しかし、たとえ試験が成功したとしても、バイオ肥料を直接使用することはできない。万能な解決策はなく、農家は地域全体の中の異なる土壌特性を考慮しなければならない。農家は作付け時期ごとに、土壌の変化する化学的・生物学的特性に合わせて標準肥料を変える。そのため、農家は栽培する作物や作付け体系を調整しなければならず、土壌特性を正確に表す地図が必要なのだが、現在、そのような地図は存在しない。

研究チームが行ったのは、まさにそれである。チームはスンダルバンスの5つの地方にまたがる19地点についてリモートセンサーマップを作成した。各地方には、平均すると4つの村がある。これらのマップは、耐塩性細菌が他の場所より多い地点や作付け体系が与える影響について教えてくれる。研究チームは、ベンガル湾に近い地方とサガール諸島のいくつかの村で、耐塩性細菌の濃度が最も高かったことを発見した。この発見は、将来のバイオ肥料生産計画に役立つであろう。

研究チームは、インドのスンダルバンスの19地点から80の土壌サンプルを採取し、コルカタのインド統計研究所で詳細な実験室分析を行った。その後、様々な土壌パラメータを測定し、単作や混作(例えば米と野菜)といった作付け体系は、土壌の塩分濃度に大きな影響を与えないという結論に達した。「違いがあるとすれば、海への近さだけです」と同教授は語る。この発見は、農家が作付けを調整し、研究者がバイオ肥料の最も効果的な使用方法を決定するのに役立つと思える。

同教授は『農業科学センター (Krishi Vigyan Kendras)』が農家に対し、作物に影響を与える正確な塩分濃度を教え、バイオ肥料が利用可能になった際には、その最も効果的な使用方法について助言すべきだとも述べた。一方、研究チームは降雨量、海水位、海水温、酸性度などを効果的に監視する方法も開発しており、取り組みをさらに推進していくであろう。同教授は「これにより、スンダルバンスの全体像が明らかになるでしょう」と語った。

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